翻訳|anchovy
地中海その他のヨーロッパの海域,およびペルー海域産カタクチイワシ科の小魚で,日本のカタクチイワシ(ヒシコ)と同類のものである。元来は魚の名であるが,ふつうその塩蔵油漬品を指す。製法は魚をうすい塩水に10時間前後浸漬(しんし)して肉を締め,身くずれしにくくしてから頭,内臓を去り,食塩15~20%,ローレル,コショウ,チョウジなどの香辛料とともに漬け込み,半年以上おいて熟成させる。これを塩水で洗って皮,中骨を除き,オリーブ油に漬け瓶詰,缶詰とする。渦巻状に巻いたものをロール・アンチョビー,長いままのものをフィレ・アンチョビーという。赤褐色でやわらかいが,塩味が強く,オードブル,カナッペなどに用いる。アンチョビー・ソースは,熟成した魚肉を磨砕して塩蔵の浸出液,糊料,香辛料を混和,加熱した滑らかなヨーロッパ風魚醬(ぎよしよう)で,濃い塩味とおだやかなしおから様の風味がある。魚臭がするのでかくし味的に用いることが多く,バターに練りまぜてアンチョビー・バターにし,魚貝類のサラダや,まがいもののキャビア,卵ペーストなどの風味づけに使う。
執筆者:平野 雄一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ペルー沖、地中海などでとれるカタクチイワシによく似た小魚の英名。また、この魚を塩蔵熟成させたもの、およびその油漬け製品もアンチョビーとよばれる。アンチョビーの生産は年により変動するが、かなり産額が多く、大部分は魚粉原料とされる。塩蔵アンチョビーをつくるには、10センチメートル前後の新鮮魚をボーメ度20の食塩水に漬け、頭部と内臓を指で除いたのち、20~30%の食塩をふりかけながら、樽(たる)に漬け込み、重石(おもし)を置き、浸出汁を除きながら6~10か月間、自己消化させる。これを、ピンセットを使って三枚におろし、ロール状に巻き、缶または瓶に詰め、サラダ油を加えて巻き締めする。歩留りは原料魚の10%程度。オードブルやサラダなどに用いる。
アンチョビーからはアンチョビーソースもつくられる。これは熟成アンチョビーを温湯に漬けて軽く振り、鱗(うろこ)や表皮を除いたのち、肉ひき器にかけ、湯に漬けて濾過(ろか)し、食塩と着色料を加えて煮沸する。浸出液の一部にはコンスターチを加え、両者を混ぜ、これに香辛料を加えて再度煮沸する。ヨーロッパで主として魚料理に用いられ、魚じょうゆの一種ともいえるものである。
[金田尚志]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
… 世界に産するイワシ類は十数種知られており,各地で重要な漁場を形成している。とくに,北アメリカ西岸のサーディンSardinops caeruleus(英名sardine),南アメリカ西岸のアンチョビーEngraulis encrasicolus(英名anchovy),ヨーロッパのピルチャードSardina pilchardus(英名pilchard)などがよく知られている。 マイワシSardinops melanosticta(イラスト)はニシン科マイワシ属の1種。…
… 世界に産するイワシ類は十数種知られており,各地で重要な漁場を形成している。とくに,北アメリカ西岸のサーディンSardinops caeruleus(英名sardine),南アメリカ西岸のアンチョビーEngraulis encrasicolus(英名anchovy),ヨーロッパのピルチャードSardina pilchardus(英名pilchard)などがよく知られている。 マイワシSardinops melanosticta(イラスト)はニシン科マイワシ属の1種。…
※「アンチョビー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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