アントラニル酸(読み)アントラニルサン

化学辞典 第2版 「アントラニル酸」の解説

アントラニル酸
アントラニルサン
anthranilic acid

o-aminobenzoic acid.C7H7NO2(137.14).フタルイミドホフマン転位,あるいはo-ニトロ安息香酸の還元によってつくられる.生体内ではビタミン L1 として存在し,キヌレニナーゼ作用によりキヌレニンからつくられる.結晶融点145 ℃.熱水,エタノール,エーテルに可溶.酸性および塩基性を示す.Ka 9.3×10-6(19 ℃),Kb 6.3×10-3(25 ℃).トリプトファン代謝の中間物である.またカドミウムコバルトなどの金属イオンと不溶性のキレート化合物をつくるので,これらの定量に用いられる.染料顔料合成の中間体としても用いられる.[CAS 118-92-3]

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改訂新版 世界大百科事典 「アントラニル酸」の意味・わかりやすい解説

アントラニル酸 (アントラニルさん)
anthranilic acid



o-アミノ安息香酸別名。融点146.1℃の無色ないし微淡黄色結晶で,熱水,エチルアルコール,エーテルに易溶。催乳作用をもつビタミンLの一種であるビタミンL1はアントラニル酸であることが見いだされている。染料とくにインジゴ人造藍)の原料として重要であり,また種々の金属イオンと不溶性のキレート錯体を作る性質を利用し,これらの金属イオンの定量分析用試薬となる。
アミノ安息香酸
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アントラニル酸」の意味・わかりやすい解説

アントラニル酸
あんとらにるさん
anthranilic acid

o-アミノ安息香酸のことで、ビタミンL1ともいう。肝臓や酵母中に存在し、ネズミの乳汁分泌に必要であるが、人間については未確認である。o-ニトロ安息香酸の還元によってつくられる。生体内では、アントラニル酸合成酵素によってつくられ、トリプトファンの母体となるほか、トリプトファンの代謝産物のキヌレニンからキヌラーゼの作用によってもつくられる。

[降旗千恵]


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百科事典マイペディア 「アントラニル酸」の意味・わかりやすい解説

アントラニル酸【アントラニルさん】

正しくはo‐アミノ安息香酸。無色の結晶。融点146.1℃。水に微溶,エーテルなどに易溶。哺乳(ほにゅう)類の催乳作用(ビタミンL1)がある。カドミウム,水銀,亜鉛などの金属イオンと不溶性のキレート化合物をつくるので,これらの金属イオンの分析試薬として用いられる。(図)→ビタミン
→関連項目アミノ安息香酸

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栄養・生化学辞典 「アントラニル酸」の解説

アントラニル酸

 C7H7NO2 (mw137.14).

 o-アミノ安息香酸ともいう.ネズミの成長促進作用があることから,ビタミンL1とよばれた.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アントラニル酸」の意味・わかりやすい解説

アントラニル酸
アントラニルさん
anthranilic acid

無色結晶,融点 144~146℃。冷水に微溶,熱水,アルコール,エーテルに易溶。インジゴの合成中間体。生体内ではトリプトファン代謝中間体。ビタミン L1 (催乳ビタミン) ,o -アミノ安息香酸としても知られている。

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