イリアス(英語表記)Īlias

  • Ilias
  • 〈ギリシャ〉Ilias

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ギリシアのホメロス英雄叙事詩。 24巻。『オデュッセイア』と並ぶギリシアの二大叙事詩。前8世紀に成立したものだが,原型は遠くミケーネ時代にさかのぼる。ギリシア軍によるトロイ包囲戦 10年目の一事件を扱う。主題は「アキレウスの怒り」とその悲劇的結末である。ギリシア軍の総大将アガメムノンと第1の勇将アキレウスが捕虜の娘をめぐって反目し,アキレウスが引揚げたために,ギリシア軍はディオメデスアイアスメネラオス,オデュッセウスらの活躍にもかかわらず苦戦を強いられる。アキレウスの親友パトロクロスはたまりかねてアキレウスの武具を借りて敵を追うが,敵将ヘクトルに倒される。ついにアキレウスが立上がって一騎討ちの結果,ヘクトルを打取る。しかし,アキレウスはヘクトルを殺せば自分もまた死すべき運命にあることを知っていた。

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デジタル大辞泉の解説

《「イーリアス」とも》古代ギリシャの長編英雄叙事詩。ホメロス作と伝えられる。「イリオントロイア別名)の歌」の意。前8世紀ごろの成立。スパルタの美女ヘレネをめぐる、トロイア軍とギリシャ軍との10年にわたる戦争のうちの数十日間の展開を描く。ギリシャ最大最古の古典イリアッド

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大辞林 第三版の解説

ギリシャ最古の長編叙事詩。二四巻一五六九三行。「オデュッセイア」と並んでホメロス作と伝えられる。ギリシャ軍第一の勇士アキレウスの怒りを主題とし、トロイア攻防一〇年間の終わりに近い五〇日前後の出来事を扱う。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ホメロスの作とされる古代ギリシアの英雄叙事詩。全編1万5693行、24巻に分かれるが、この巻別は後世(前3世紀ごろ)に由来する。制作の年代は紀元前8世紀の中ごろとするのが通説である。題名は「イリオスの歌」の意で、イリオスはトロヤの別称である。10年にわたるトロヤ攻防戦も終末に近いころの、約50日間のできごとを扱っているが、その中心主題は冒頭に歌われているように「アキレウスの怒り」である。総帥アガメムノンが妾(めかけ)としている捕虜の女クリセイスは、アポロンの神官の娘であるが、その返還を拒んだことからアポロンの怒りを招き、疫病が蔓延(まんえん)する。その対策をめぐってアガメムノンとアキレウスとの間に争いが起こり、アキレウスは侮辱を被ったのを怒り、戦場にたつのを拒む。アキレウスの母なる海のニンフ、テティスはゼウスにすがってわが子の名誉回復を嘆願し、ゼウスはアキレウス再起の花道を設けるために、戦局をギリシア軍に不利になるように計らう。アガメムノンも我(が)を折って和解を申し入れるが、アキレウスはそれを拒む(巻9)。戦況は破局的になり、アキレウスの親友パトロクロスは見かねて、アキレウスの武具を借りて勇戦するが、トロヤ方の総帥ヘクトルに討たれる(巻16)。ここにおいてアキレウスも親友の仇(あだ)を報ずるために決起し、ヘクトルを一騎打ちで倒す(巻22)。アキレウスの怒りはなおも収まらず、ヘクトルの死骸(しがい)を辱め続けるが、神々のとりなしにより、トロヤの老王プリアモスが、夜陰にアキレウスの陣営を訪れ、息子の遺体を収容して城へ帰り、葬儀を営むところで全編が終わる(巻24)。
 ギリシア方ではアキレウス、トロヤ方ではヘクトルがもっとも重要な人物で、物語もこの2人を中心にして進行するが、そのほかアガメムノン、メネラオス、オデュッセウス、ディオメデスらの諸将もそれぞれの特性を発揮して活躍し、さらにヘレネ、アンドロマケ、ブリセイスらの女性も彩りを添える。とくに名場面ともいうべき箇所を二、三あげると、メネラオスとパリスの一騎打ちを、ヘレネとプリアモスが城壁上から観望する場面(巻3)、ヘクトルとその妻アンドロマケの別れ(巻6)、プリアモスがヘクトルの遺骸を引き取るくだり(巻24)など。『オデュッセイア』とともに、ギリシア最大最古の古典として、後世までギリシア人全体の精神生活の糧となったばかりでなく、ヨーロッパ、ひいては世界の古典としてその影響は偉大なものがある。[松平千秋]
『呉茂一訳『イーリアス』全3冊(岩波文庫) ▽藤縄謙三著『ホメロスの世界』(1965・至誠堂)』

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旺文社世界史事典 三訂版の解説

『オデュッセイア』とともに,ホメロスの作といわれる古代ギリシア最大の叙事詩。英語ではイリアド(Iliad)
24巻・1万5693行からなる。イリアスとは,トロヤの別名イリオンに由来し,イリオンの歌の意。アガメムノンを総大将として行われたトロヤ戦争をうたい,特に英雄アキレウスのトロヤ攻略が劇的に展開されている。ギリシア人は弦楽器リラに合わせて好んで吟誦 (ぎんしよう) した。ミケーネ文明を明らかにする史料的価値も高い。

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