プリアモス(読み)ぷりあもす(英語表記)Priamos

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プリアモス」の意味・わかりやすい解説

プリアモス
Priamos

ギリシア神話におけるトロイの最後の王。ラオメドンの息子。トロイがヘラクレスに攻略されたとき,父王らは殺されたが,彼は幼かったために命拾いをし,のち王位を継承した。最初,アリスベを妻としたが,のちヘカベを妃に迎え,彼女との間にヘクトルパリス,ポリュドロス,クレウサ,ポリュクセネカッサンドラらをもうけた。トロイ戦争ではヘクトルをはじめ息子たちの戦死にあい,みずからは落城の際,アキレウスの息子ネオプトレモスに殺され,妻や娘たちは捕虜としてギリシア方に連れ去られた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プリアモス」の意味・わかりやすい解説

プリアモス
ぷりあもす
Priamos

ギリシア神話でトロヤ滅亡のときの王。別名をポダルケスという。父ラオメドンが約束を守らなかったために、ヘラクレスにトロヤを攻略され、兄弟のうち幼少だった彼だけが捕虜にされて、ほかはみな殺されたという。のちにトロヤ王となり、ヘカベをはじめとする多くの妻妾(さいしょう)からヘクトル、パリスなどの子をもうけた。ホメロス叙事詩イリアス』では、高齢ながらも温厚で寛容のある老王として描かれ、夜間ひそかにアキレウスの陣屋へ行ってヘクトルの死骸(しがい)をもらい受けようとしたり、怨嗟(えんさ)の的のヘレネをかばってやる。息子たちが次々と討たれて祖国が滅亡していくのを見なければならなかった彼は、トロヤ陥落のとき、宮殿の中のゼウス像にすがって命ごいをするが、アキレウスの子ネオプトレモスに殺される。彼の名はギリシア語系ではなく、おそらく古いオリエント系の伝説から生まれた人物であろう。

[伊藤照夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android