日本大百科全書(ニッポニカ)「インスタント食品」の解説
インスタント食品
いんすたんとしょくひん
簡単にしかも短時間で、あまり手間をかけないで調理できる保存性食品の総称。短時間煮る、湯を加える、水や牛乳を加えて冷やすといった単純な操作で、料理となるものである。かまぼこ、ハム、ソーセージなど生(なま)のまま食べられるものは、調理を必要としないので、インスタント食品の範囲からはいちおう外されている。
[河野友美]
沿革
日本古来のものでは、麦こがし、即席汁粉などがある。麦こがしは、おそらく古代からあったとみられるし、即席汁粉は江戸時代にできた。糒(ほしいい)も一種のインスタント食品である。現在多く利用されているものは、アメリカで発達したものが多いが、即席麺(めん)のように、日本で生まれたものもある。インスタント食品という呼び名が使われ始めたのは、1957年(昭和32)ごろからである。
[河野友美]
種類
形態からは、粉末食品、乾燥食品、濃縮食品、冷凍食品、缶詰、レトルト食品がある。種類としては、米飯類、スープ、ソース類、麺類、だし類、みそ汁、吸い物、嗜好(しこう)飲料、デザート類、クリーム類、ケーキ類といったものがある。
米飯類としては、白飯、赤飯、五目飯(めし)、バターライスなどがあり、形態では、缶詰、レトルト、α米(アルファまい)がある。α米は、炊飯ののち脱水したもので、湯を加えるか、簡単に煮るだけで飯になる。麺類では、即席ラーメンが代表的なもので、そのほか、うどん、そば、スパゲッティがあり、製麺後、熱で処理し、揚げるか、熱風乾燥する。スープを吸収させたものと、別添形とがある。そのほか、袋詰めのゆで麺形態のものもある。スープは、粉末、濃縮液体、キューブ型、そのままの形があり、袋入り、紙箱入り、缶詰、固形物包装がある。ソース類では、カレールウ、ミートソース、ホワイトソース、ドミグラスソース、トマトソースなどがあり、粉末、液状、濃縮ペースト状があり、袋入り、レトルト、瓶詰、缶詰といった形態がある。だし類では、カツオ、昆布、煮干しなどや、麺用の汁などがあり、おもに濃縮、粉末類が多い。デザート類は、ゼラチン系や海草抽出物を主体とするゼリー類、インスタントプディング、ババロアなど、ケーキ類では、主として粉末で、ケーキミックス、ホットケーキミックス、パンケーキミックスなどがある。嗜好飲料では、多くが粉末で、コーヒー、紅茶、ココア、清涼飲料、シェークなど、クリーム類では、粉末クリーム、ホイップクリームなどがある。このほか、茶碗(ちゃわん)蒸し、グラタン、フライのような冷凍品、凍結乾燥によるすき焼き、シチュー、おでんなど各種の料理類がある。
[河野友美]
栄養
殺菌のための高温加熱によるビタミン類の損失、保存期間が長くなるための、含有脂肪類の酸化、成分変化などは避けられない。また、材料などの制約から、栄養成分の偏りなどもみられる。したがって、インスタント食品に偏った食生活をすると、ビタミン、タンパク質の不足などの問題がおこりやすいから注意を要する。しかし一方では、手作りでは得がたい風味をもつものもあり、また、簡便性から考えて、上手に利用すれば、食生活の幅を広げるのにも役だつ。とくに、嗜好品やデザート、ケーキなどでは、楽しさをプラスする点が大きい。
[河野友美]
『森枝卓士著『世界のインスタント食品』(徳間文庫)』