インドキシル(読み)いんどきしる(英語表記)indoxyl

日本大百科全書(ニッポニカ) 「インドキシル」の意味・わかりやすい解説

インドキシル
いんどきしる
indoxyl

複素環式化合物の一つで、3-ヒドロキシインドールの別名。天然にはインドキシルの配糖体であるインジカンアグリコン(糖以外の成分をいう)としてタイセイアイなどの植物に分布している。

 不安定な黄色結晶で、アセトンによく溶け、水、エタノールエチルアルコール)、エーテルなどにも可溶。アルカリ性溶液中で容易に酸化されてインジゴになる。水酸化アルカリの存在下でフェニルグリシンナトリウム塩とナトリウムアミド反応をさせてインジゴを合成する。その際の中間体がインドキシルであるが、普通はインドキシルを単離しないで、そのまま酸化してインジゴにする。藍(あい)などのインジカンを含む植物を用いて、昔の方法で藍染めを行う場合にも、植物の汁をアルカリ性水溶液(灰汁など)と混ぜて空気を吹き込む操作により、植物中のインジカンを加水分解してインドキシルとし、それを酸化させるという二つの反応行程をいっしょに行って、藍色染料のインジゴをつくっている。

[廣田 穰]

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化学辞典 第2版 「インドキシル」の解説

インドキシル
インドキシル
indoxyl

1H-indol-3-one.C8H7NO(133.15).3-インドリノンともいう.フェニルグリシンのアルカリ塩と水酸化カリウム水酸化ナトリウム,ナトリウムアミドなどとの混合物を融解させて合成する.黄色の柱状晶.融点85 ℃.アルカリ性水溶液中で容易に空気酸化され,インジゴとなり,インジゴ合成の中間体として重要である.アセトンに易溶,水,エタノール,エーテル,酢酸,クロロホルム,ベンゼンに可溶,石油エーテルに難溶.[CAS 3260-61-5]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「インドキシル」の意味・わかりやすい解説

インドキシル
indoxyl

化学式 C8H6NOH 。3-オキシインドールが正式化学名。黄色の結晶,融点 85℃。アルカリ性溶液中で空気酸化されてインジゴになる。藍の原料植物中に含まれるインジカンはインドキシルのグルコシドで,植物体内の酵素によって加水分解されてインドキシルを生じ,さらに空気酸化されてインジゴを生成する。また草食動物の尿中にインドキシル硫酸エステルとして排泄されることがあり,これも酸化されるとインジゴを生じる。

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世界大百科事典(旧版)内のインドキシルの言及

【アイ(藍)】より

…これを蒅(すくも)と呼び,臼に入れてつき固めて藍玉をつくる。この藍玉には2~10%の不溶性のインジゴが含まれ,これに木灰,石灰,ふすまを加えて発酵させると水溶性のインドキシルとなる。これが藍汁で,布を漬けて空気にさらすと酸化されてふたたびインジゴになり,染色される。…

※「インドキシル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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