改訂新版 世界大百科事典 「タイセイ」の意味・わかりやすい解説
タイセイ (大青)
Chinese indigo
Isatis indigotica Fortune
中国原産の多年生のアブラナ科植物で,江南大青(こうなんたいせい)と呼ばれ,インジゴを含み,アイとともに染料に用いられたようである。江戸時代に中国から渡来して,幕府の薬園であった小石川植物園に植えられたという。タイセイ属Isatisはアジア,ヨーロッパ,アフリカから30種近くが報告されているが,分類のむずかしい仲間で,まだかなり混乱があるようである。
ホソバタイセイI.tinctoria L.(英名dyer's-woad)はヨーロッパや西南アジア原産の越年草で,タイセイと同様,染料に用いられた。ハマタイセイI.tinctoria L.var.yezoensis(Ohwi)Ohwiは一名エゾタイセイともいわれ,北海道から朝鮮,ウスリー地方の海岸に野生している。高さ30~60cmの越年草で,全体に粉白色を帯びて毛がない。葉は長さ6~12cm,低い歯牙があり,基部は茎を抱く。6~7月ころ,黄色の小さい十字花を開き,果実は長楕円形で,細い柄があってぶら下がる。アイヌ人が染料にしたといわれる。
執筆者:村田 源
染料
ヨーロッパではホソバタイセイが用いられ,染料名をパステルpastel,ゲードguèdeという。青色,媒染剤を用いると黒に近い青色をあらわす。大青はインド産の藍が流入する前の一時期,ヨーロッパの代表的な植物染料であった。栽培に当たっては開花を待たず,夏季充実した葉を順次摘み取る。収穫が長期にわたるため膨大な農業労働力を要した。臼で搗(つ)いてパルプ化し,球状にまとめて農家から出荷される。これを粉砕,加湿,攪拌して発酵発色させ,さらに乾燥させて顆粒状として初めて商品となる。収穫から商品化までにほぼ1ヵ年を要した。広く栽培されたが産地として有名なのはチューリンゲンのゴータやエルフルト周辺,南西フランスのトゥールーズ周辺で,特に1450年以降,トゥールーズからはスペイン,イギリス,オランダに輸出され同市に伝説的な巨富をもたらした。生産量,品質ともに不安定で投機的性格が強く,藍の登場により,1561年に大暴落を見,国際大青商業は破滅した。
執筆者:渡邊 昌美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報