藍染め(読み)あいぞめ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「藍染め」の意味・わかりやすい解説

藍染め
あいぞめ

藍は建染(たてぞめ)染料vat dyesの一種で、その成分である青藍(せいらん)は水に対して不溶解性であるが、これを発酵させることによって還元して白藍となりアルカリ液に溶解する。この中に被染物を入れて液を吸着させてから空気中にさらすと、白藍は酸化し、もとの水に不溶解の青藍となって被染物に充着する。これを行うためには藍玉もしくは蒅(すくも)(アイの葉を発酵させて製した染料)を甕(かめ)に入れて水を入れ、0~40℃の温度を保ちながら、藍菌の繁殖によって発酵させる。発酵促進剤として、ふすまブドウ糖などを入れる。一方これに木灰、石灰などを加えて発酵を調節しながら、時に攪拌(かくはん)して約10日から2週間たつと、発酵が進んで液は黄緑色を帯びた飴(あめ)色になり、液面に泡を生じ、これが空気に触れて酸化して藍色になる。このときに染液に糸または布を漬け、約1分ほど置いて取り出して水を切ると、黄色から緑色となり、やがてきれいな薄青い色になる。これを所望濃度に達するまで繰り返して(濃紺で10回から12回ぐらい)染め上げる。これはいわゆる濁り建てである。これに対して澄まし建ては、一度発酵した液の上澄みを捨て、水を加えて再発酵させ、これを繰り返して染液をつくる。要は、染液の中から不純物を除いて澄ましていくので、さえた青色が得られる。

 藍染めはこれを繰り返すにしたがって、甕の中の溶液は、藍分が被染物に付着してとられるので、しだいに薄くなり、発酵も不活発になってくる。これをもたせるために液温を調節したり、攪拌したりして手当てをするが、最後はまた新しく藍建てをしなければならない。したがって藍染めの工房では、少なくとも数個から数十個の甕を用意して、液の濃淡にしたがって使い分けていく。

 藍建て法には、以上の発酵建てのほかに、亜鉛末と石灰を用いて青藍を還元する亜鉛建て(末(まつ)建て)や、次亜硫酸ソーダまたはカ性ソーダ、緑礬(りょくばん)(硫酸第一鉄)などの還元剤と、消石灰を加えた水溶液に熱を加えて還元させる還元建てがあるが、藍の染液を長持ちさせるためには発酵建てがもっとも適している。

 藍を用いて布帛(ふはく)に色をつけるためには、上記の方法のほかに、きわめて簡単で原始的な方法もある。その第一は摺(す)り染めとでもいうべきもので、アイの葉を直接布に挟んで槌(つち)でたたいて汁をつけて放置すると、自然にアイの葉型が布に染め付く。第二は俗に生葉(なまは)染めといわれるもので、アイの葉を摺りつぶしてとった汁に、布帛や糸を漬けて染めるか、またはアイの葉を水に入れて、これを低温(40~60℃)で煮た液へ被染物をつけて染める。第三は、今日でもアフリカインドネシアの一部などで行われている方法で、アイの生葉を茎ごと甕へ入れ、水と消石灰を加えて暖かい所へ数日間放置して、液が発酵すると中の雑物を取り除いて、その液でただちに染色する。これは数十年前までは、日本の奄美(あまみ)大島でも家庭染色として行われていたという。

[山辺知行]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

事典 日本の地域遺産 「藍染め」の解説

藍染め

(徳島県徳島市)
とくしま市民遺産」指定の地域遺産。
徳島は藍染の染料となる蓼藍の産地として、藩政時代から明治にかけて繁栄した

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報

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