エコチル調査(読み)えこちるちょうさ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エコチル調査」の意味・わかりやすい解説

エコチル調査
えこちるちょうさ

「子どもの健康と環境に関する全国調査」の通称。国内の10万組の子供と両親を対象とし、子供が胎児の段階から13歳になるまでの間、定期的に健康や発達状態を確認して、環境要因が子供の成長に与える影響を明らかにするための疫学調査である。環境省が2011年(平成23)1月から2027年までを予定して実施している。エコチルはエコロジーecologyとチルドレンchildrenを組み合わせた造語である。

 調査は、「胎児期から小児期にかけての化学物質曝露(ばくろ)が、子供の健康に大きな影響を与えているのではないか」という仮説に基づく。調査対象であるダイオキシン類や有機フッ素化合物などの残留性有機汚染物質、水銀や鉛などの重金属、ビスフェノールAなどの内分泌攪乱(かくらん)化学物質(環境ホルモン)、農薬などに身体がさらされることが、身体発育や先天異常、性分化の異常、精神神経発達障害、免疫系の異常、代謝内分泌系の異常などと関係しているかどうかを調べる。また、家族や生活に関係した遺伝的要因、社会要因や生活習慣要因も合わせて調査する。国立環境研究所が中心となり、国立成育医療研究センターが医療面をサポートしながら、全国15地域の大学などに設置されたユニットセンターで調査を実施する。

 社会や生活環境がわずか半世紀ほどで激変したため、その間に発生した新たな環境リスクがどのような悪影響を人に与えているのかは詳しくわかっていない。1997年の先進8か国環境大臣会合では、子供の健康を環境汚染から守る取り組みを加速するためのマイアミ宣言が採択され、国ごとに取り組みが進められることになった。エコチル調査もその一環であり、化学物質の摂取や生活環境などが子供の成長や発達に与えるリスクを明確に評価できれば、将来における環境基準の策定やリスク管理体制の構築につながると期待される。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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