人の活動によって生じた環境汚染や環境負荷が原因となって、人の健康や生態系に影響を及ぼす可能性があること。本来は地球環境問題を含めてすべての要因が対象であるが、狭義には化学物質による環境リスクをいう場合が多い。リスクの概念は、将来において予期しない出来事を完全に回避することは不可能なので、その発生の確率と影響の大きさの程度に応じて対応しようというものである。化学物質による環境リスク対策は、特定の物質を規制するだけでは予防できない場合がある。そこで社会全体で目ざすべきリスクレベルについて合意形成を図りながら環境リスクを最小限に抑えていくことが求められる。具体的な対策として、科学的な知見によってリスクの発生確率を推定し評価するリスク・アセスメント、環境リスクを低減させるためのリスク・マネジメント、リスクに関する情報や認識を国民や事業者などと共有し適切な行動を促すためのリスク・コミュニケーションが重要となる。化学物質による環境リスク対策の一つとして、環境汚染物質排出移動登録制度(PRTR)がある。日本でも1999年(平成11)7月に特定化学物質管理促進法が成立し、この制度が法制化された。
[山本耕平]
人間活動や災害により,環境へ加えられる可能性のある悪影響をいう.狭義には,人間活動による環境破壊や環境汚染などをいい,健康や生活環境,生態系に悪影響を及ぼすおそれのことである.船舶の事故や工場からの排水などにより,石油や化学物質などで海洋や生活環境が汚染された場合,生態系や生活環境に及ぼす影響は大きく,その回復には多大な労力と費用を要することになるため,未然に環境リスク低減化防止策をはかることが求められる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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