エラブオオコウモリ(英語表記)Northern Loo-choo fruit bat
Pteropus dasymallus dasymallus

改訂新版 世界大百科事典 「エラブオオコウモリ」の意味・わかりやすい解説

エラブオオコウモリ
Northern Loo-choo fruit bat
Pteropus dasymallus dasymallus

東アジアのオオコウモリ属中最北に分布する,首に黄褐色の輪がある翼手目オオコウモリ科の哺乳類南西諸島台湾の火焼(かしよう)島に固有のクビワオオコウモリP.dasymallusの1亜種で,口之永良部島と宝島にのみ産する。長崎,江戸,南九州,屋久島などにおける古い記録や1954年12月の夜に鹿児島市内の家の垂木にぶら下がっているのがとらえられた記録などは迷獣に基づくものであろう。体長19~21cm,前腕長12~14cm,吻(ふん)が比較的長く,耳介は25cm前後で小さく,その半分は毛に隠れ,基部は筒状で耳珠(一般には耳介の前方にある)がない。尾はなく,腿間膜(たいかんまく)は後肢の内側にわずかに発達するのみ。体毛は羊毛状で長く,背面はチョコレート褐色,首に淡灰黄色の幅広い輪状の斑紋がある。より南方に分布する他の亜種より暗色で頭部黒色に近い。果実食で主として夜活動する。カキナシが熟すころ多数集まってきて,これらを食害し,石油缶などで大きな音をたてて撃退をはかっても,容易に立ちのかない。近似の先島諸島産のヤエヤマオオコウモリP.d.yayeyamae日中は森林中の立木茂みに2~3頭ずつぶら下がり,日没後から早朝まで活動し,イヌビワガジュマルクワパイナップル,バナナ,アダン,ミカンなどの果実を食べる。ときに日中も飛翔(ひしよう)することがある。近年,西表(いりおもて)島で栽培されるようになったミカン畑やパイナップル畑の害獣とされる。5~6月ごろ1産1子を生む。天敵はイリオモテヤマネコ。このほか,近似の亜種には大東島に分布するダイトウオオコウモリP.d.daitoensis,沖縄本島のオリイオオコウモリP.d.inopinatus,火焼島のタイワンオオコウモリP.d.formosusがある。上記の日本産の亜種はすべて天然記念物。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エラブオオコウモリ」の意味・わかりやすい解説

エラブオオコウモリ
Pteropus dasymallus; Ryukyu flying fox

翼手目オオコウモリ科。単にオオコウモリとも呼ばれる。体長 19~23cm,前腕長 12~15cm。体毛は長く茶色で,鈍黄色または黄白色の頸輪がある。吻は長く突き出し,眼は大きい。夜行性で,日中は群れをなして樹の枝にぶらさがって休息する。果実を主食とし,クワの実やバナナ,パイナップルを食べ,果樹園にしばしば害を与える。日本の南西諸島,台湾に分布する。

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