翻訳|oil shale
油母ケツ岩,油ケツ岩ともいい,粘土質の層状岩で,乾留によって天然の石油と同じ性質の油分(ケツ岩油,シェールオイルshale oil)を約40l/t以上留出するようなケツ岩をさす。オイルシェールは,石油根源岩と同類のものであるが,石油を生成するほどの熱を受けておらず,通常の石油根源岩より有機物の含有量が多い。オイルシェールの原始埋蔵量は1976年のアメリカ地質調査所の報告では全世界で約3.1兆バレル(1バレル=0.159kl)前後と推定される。可採埋蔵量は83年の第12回世界エネルギー会議の報告では改質原油ベースで約6000億バレルともいわれている。おもな賦存地域としては,北アメリカ,ブラジル,オーストラリア,中国,シベリアなどがあげられており,このうち,1.8兆バレルのアメリカと8000億バレルのブラジルの2ヵ国で全体の80%前後を占めている。
オイルシェールの成因は産地によって一様ではないが,その形成を堆積環境から分類すると,アメリカのコロラド,ユタ,ワイオミングの3州にまたがるグリーンリバーケツ岩やカナダのアルバータケツ岩のように大陸内の大きな湖に堆積したもの,シベリア北部やブラジル南部のように大陸棚の浅海部に堆積したもの,オーストラリアや中国の撫順のように小さな淡水湖,沼あるいは潟などに堆積したものに大別される。この形成の場は石炭の場合と類似しているが,ガービンJ.M.Gavinによれば,灰分を33%以上含むものがオイルシェールで,33%以下のものが石炭であると区別している。その他,石炭との根本的な相違は,含有する有機物のタイプすなわち質である。石油根源岩と同様に,オイルシェール中の有機物の約90%以上は,油母(ケロジェンkerogen)と呼ばれる有機・無機溶媒に不溶な,熱分解によって油分を発生する固体で,高分子有機物の集合体によって占められている。石炭中のケロジェンは高等植物などの木質部,茎部に由来したのに対し,オイルシェール中のケロジェンはおもに藻類に由来している。
オイルシェールから油分を回収する方法には,地上乾留法と地層内乾留法がある。地上乾留法では,地表採掘(露天掘り)や坑内採掘によって採収されたオイルシェールを乾留炉(レトルト)に送り約500℃の温度で熱分解する。地層内乾留方式は,直接地下でオイルシェールから油分を回収しようとするものである。最近のシェブロンChevron社の予測では,石油価格,投下資本利益率などを考慮すると,オイルシェールの商業化は2050年以後に原油価格が40~60ドル/バレルの幅の中で可能になると推定される。
執筆者:佐藤 俊二
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油母頁岩(ゆぼけつがん)のことで、油母(シェールオイル)とよばれる固体有機化合物(ケロジェン)を含む堆積(たいせき)岩である。乾留により得られる油が1トン当り約40リットル以上のものをオイルシェールとみなす。石油やオイルサンドは特定地域に偏在しているが、オイルシェールは世界中に分散している。世界の埋蔵量は約3兆バレルと評価されており、アメリカ、オーストラリア、ロシア、中国などに大規模な鉱床がある。
合成石油を製造するためには、粉砕、加熱、石油状物質の抽出、精製を行わなければならない。おもな採掘国はエストニア、ブラジル、中国である。1973年の第一次オイル・ショック以降、オイルシェールからの合成石油製造は、環境、技術、経済的問題が多いにもかかわらず脚光を浴びるようになってきた。しかし、オイルサンドと比べ経済性が悪いため、大規模な生産は行われていない。なお、オイルサンドはオイルシェールとともに非在来型石油と称されている。
[難波征太郎]
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(槌屋治紀 システム技術研究所所長 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
… 天然ガスは,メタン分が50~100%近く含まれる軽質の炭化水素である。その成因は,石油に付随して形成されたもの,石炭に付随したもの,オイルシェールに付随したものと多様であるが,いずれの天然ガスも組成・性状に大きな違いはない。 天然ガスが世界で大規模に利用されるようになったのは,第2次大戦後のことであり,したがって探査・開発の歴史も浅い。…
※「オイルシェール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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