オニク(その他表記)Boschniakia rossica (Cham.et Schltdl.) Fedtsch.

改訂新版 世界大百科事典 「オニク」の意味・わかりやすい解説

オニク
Boschniakia rossica (Cham.et Schltdl.) Fedtsch.

ミヤマハンノキの根につくハマウツボ科寄生植物。茎は多肉質の太い円柱形の暗紫色で,円柱形の花穂に多数の花をつける。茎は直立して高さ15~30cm,密に黄色の狭三角形の鱗片葉で包まれる。夏,全長の1/2ほどの長さの花穂に,多数の暗紫色の花をつける。黄色の苞葉のわきに1花ずつつき,萼は杯状で不ぞろいに5裂する。花冠は筒部がつぼ状にふくらんだ唇形おしべは4本で,花柱と共に花冠の外へ伸びる。蒴果(さくか)は卵形,多数の小さな種子がある。東アジア北東部,北アメリカに分布し,日本では本州中部以北,北海道の高山にみられる。和名は“御肉(おにく)”で,中国で強壮薬とされるホンオニク(肉蓯蓉(にくしゆよう))Cistanche salsa Benth.et Hook.に誤って当てられ,珍重される。木曾御嶽山や富士山で採集され,全草を乾かしたものを強壮薬として用いる。一名キムラタケといい,これは金精茸(きんまらたけ)の意味である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オニク」の意味・わかりやすい解説

オニク
おにく / 御肉
[学] Boschniakia rossica (Cham. et Schltdl.) Fedtsch.

ハマウツボ科(APG分類:ハマウツボ科)の多年草。別名キムラタケ。日本ではミヤマハンノキの根に寄生する。茎は高さ15~30センチメートル、暗褐色で太く、黄褐色の鱗片葉(りんぺんよう)が密生する。7~8月、茎の上半部に穂状をなし、暗紅紫色の唇形花を開く。中部地方以北の本州、北海道の亜高山帯から高山帯の林内に生え、アジア北部から北アメリカに分布する。名は、中国西北部産の肉蓯蓉(にくじゅうよう)Cistanche salsa (C.A.Mey) Beckにあてて用いたことによる。キムラタケは金精茸(たけ)の意味で、全草を乾燥したものを和肉蓯蓉と称し、古くから強壮、強精薬として珍重された。

 オニク属は萼(がく)が杯状で合着し、不規則に5裂する。1属1種である。ハンノキ属の植物に寄生する。

[高橋秀男 2021年9月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オニク」の意味・わかりやすい解説

オニク(御肉)
オニク
Boschniakia rossica

ハマウツボ科の寄生植物。日本をはじめシベリアや北アメリカなどの高山帯に稀産する。無緑葉でミヤマハンノキやまれにヤシャブシなどの根に寄生し,地下塊根から高さ 10~30cmの肉質の茎を出す。色も肉色で鱗片状の葉でおおわれ,夏にその頂部に穂状の花序をつける。花は密につき,黄褐色の包葉に抱かれるようにして紫色の唇形花をつけ美しい。全草を乾燥したものを古くから霊薬として珍重し,強精剤とされた。富士山五合目付近や木曾御岳山などのものが名高い。よく似た別種でアジア大陸に生じるホンオニク Cistanche salsaは中国でやはり古くから強壮剤として有名である。

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百科事典マイペディア 「オニク」の意味・わかりやすい解説

オニク

キムラタケとも。ミヤマハンノキの根に寄生するハマウツボ科の一年草。本州中部以北,北海道の高山にはえ,東アジア,カムチャツカに分布。高さ20cm内外,茎は暗紫色,肉質で太く,直立し,淡黄褐色で鱗片状の葉を密生する。夏,暗紫色の唇形(しんけい)花を密に穂状につける。ネコが好む。全草を乾燥させたものを肉【じゅ】蓉(にくじゅよう)とよび,強壮剤とされるが,本物の肉【じゅ】蓉は中国に産する別物である。

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