原子力災害時に現地対策本部が置かれる前線拠点。正式名は緊急事態応急対策等拠点施設。原子力発電所などの施設(サイト)から離れた地点に置かれるため「オフサイトセンター」とよばれ、原子力防災センターともいわれる。原子力発電所、核燃料工場などで事故が発生した場合、国・自衛隊・地方公共団体・電力会社関係者らが集まって情報収集、被曝(ひばく)防護、住民避難指示などにあたる拠点となる。1999年(平成11)の茨城県東海村臨界事故の教訓を踏まえ、原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)に基づき、2000年(平成12)、関係施設から20キロメートル未満の地点への設置が義務づけられた。しかし2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故では停電や放射線量上昇のためまったく機能せず、2012年度以降、関係施設から5~30キロ圏内で津波などの影響を受けない場所へ順次移転した。2020年(令和2)時点で全国に23か所あり、使用不能となった場合に備え、代替オフサイトセンターも設けている。
全額国庫負担で整備されるオフサイトセンターは免震構造にし、放射性物質の放出に備えて建屋の気密性を高め、空気浄化フィルターや換気設備をもち、汚染を防ぐため入退室の動線を別としている。衛星回線、非常電源、一斉招集システム、首相官邸や地方公共団体とのテレビ会議システム、原発運転状況や周辺放射線のモニタリングシステム、放射性物質の広がり方を予測するSPEEDI(スピーディ)(System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information)、除染室、防災車、非常食、仮眠室、シャワー、記者室などを備えている。事故時にセンターは首相官邸、原子力事業者、自衛隊、地方公共団体などと情報を共有・連携し、事故情報の収集にあたるプラント班、放射線情報を収集・分析する放射線班、医療班、住民安全班などに分かれ、事故拡大防止のための応急対策、住民の被曝防護策、避難指示区域の設定などにあたる。平時は安全運用の確認、防災訓練、研修などの災害に備えた活動を行っている。
[矢野 武 2020年8月20日]
(渥美好司 朝日新聞記者 / 2008年)
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