建物の基礎部分に地震の震動を軽減させる装置をつけ、建物に揺れが伝わりにくくする構造をいう。建物の足元に、ゴムと鉄板を交互に重ね合わせた「積層ゴム」などの免震装置を設置し、建物の長周期化を図って、地震との共振を避けるシステムである。建物の固有周期(建物が1回揺れて戻ってくるまでの時間)と、地震の揺れの周期が一致すると、共振という現象が起き激しく揺れるが、固有周期を長くすれば、共振を回避できるというわけで、建物に伝わる慣性力(地震荷重)を減少させる。ただし、周期延長に伴い変形は増大するため、過度にならないようエネルギー吸収装置を附置している。
この「免震構造」の考え方は、すでに明治中ごろから昭和初期にかけて生まれていた。「地面と建物とを切り離しておけば何ら地震力を受けることがない」といった一見、非現実的な発想であるが、近年になって前述の「積層ゴム」に代表される支承(鉛直方向には硬くて、水平方向には柔らかい部材)の発達と、地震と建物の揺れに対する解析技術の進歩が重なって、実用化が急速に進んだ。一般の中低層建物は固有周期が1秒以下の剛な構造物であるため、地震の影響を受けやすいが、このような建物を積層ゴムなどの水平方向に柔軟な免震支承で支えることによって、建物の固有周期を2~3秒に伸ばして地震の力をかわす。近年では高層マンションなどへの適用が進み、固有周期が数秒にも及ぶ例が出ている。長周期化によって慣性力は低減されるものの、一方で生じる大きな変形については、何らかのダンパ(減衰材)で低減する。地盤の悪い敷地での適用や、高層建物への適用においては、地震動の長周期成分に対する共振などへの懸念があり慎重な配慮が求められる。
[金山弘雄]
免震装置の基本構成は、支承材、復元材、および減衰材である。支承材は建物重量を支持するもので、積層ゴム支承、すべり支承、転がり支承などがある。復元材はバネ材で、それを適切に選択することで建物を長周期化させることができる。積層ゴム支承は復元材を兼ねているが、他のすべり支承、転がり支承は別途復元材が必要である。減衰材はエネルギーを吸収して免震層の過大な変形を防ぐもので、制震構造と同様に、鋼材系をはじめとする金属系ダンパとオイルダンパがある。ただし、制震用のダンパはストローク(可動範囲)がせいぜい数センチメートルであるのに対し、免震層の変形は数十センチメートルになるため、おのずとその仕様は異なり制震用をそのまま用いることはできない。
従来は、その原理から適用は中低層ビルに限定されてきたが、近年では超高層建物用の装置もくふうされ、集合住宅を中心に適用が進んでいる。
[金山弘雄]
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