日本大百科全書(ニッポニカ) 「オルニトミムス」の意味・わかりやすい解説
オルニトミムス
おるにとみむす
ornithomimid
[学] Ornithomimus velox
竜盤目獣脚類(亜目)テタヌラ類(下目)コエルロサウルス類Coelurosauriaマニラプトル形類Maniraptoriformesオルニトミモサウルス類Ornithomimosauriaオルニトミムス科Ornithomimidaeに属する代表的な恐竜。北アメリカの白亜紀後期、約7200万年~6600万年前の地層から産出した雑食恐竜(肉食説と草食説がある)。属名の意味は、「オルニト」が鳥の、「ミムス」がまね。1890年に記載された古い種類。この仲間は全体としてダチョウに似た軽快な体つきをしているのでダチョウ恐竜とよばれている。前上顎(じょうがく)部が大きくくちばし状で歯がない。腕はきゃしゃで同じくらいの長さの3本指を備えた手は長い。鉤(かぎ)づめがとても長くほっそりしていて、少しばかり曲がっている。中足骨(ちゅうそっこつ)が長く、すねの骨の8割近くの長さを示す一方、足指は短くてがっしりしている。ほかの獣脚類や鳥類とは違って、内側の足指を失っている点とあわせて、速く走るのにこれほど適応した恐竜はいないことを示す。目は丸くダチョウよりも大きく、頭骨の幅が狭く、高さがある。物を見るときには、頭をあちこちと動かしたらしい。外鼻孔は細長く伸びてくちばしの先近くにある。また脳函(のうかん)(脳頭蓋(とうがい)。脳とその周辺の組織が入っていたところ)が大きく現生のダチョウなみ。長い頸椎(けいつい)が10個もあるので頸(くび)全体が長いが、ダチョウよりは短く、それほどしなやかではない。胸は平らに近く、さほど幅広くはない。腹肋骨(ふくろっこつ)の位置から察すると、腹は空腹時の捕食恐竜よりは出っ張っていたとされる。植物を消化するための場所がつねに必要であったからと考える人もいる。骨盤はかなり幅広く、ダチョウとほぼ同大の卵を産んでいたようである。尾はほかの獣脚類に比べると短い。これもたぶん体重を減らして速く走るためのくふうの一つであろう。オルニトミムス類の最古の種類のペレカニミムスPelecanimimusはスペインの白亜紀前期、約1億2600万年前の地層から産出したもので、200本以上の細い歯をもち、ハルピミムスHarpymimusはモンゴルの白亜紀前期、約1億年前の地層から産出したもので、あごの先端に6本の歯をもつ。ほかのダチョウ恐竜に、ガルディミムスGarudimimus、ガリミムスGallimimus、アルケオルニトミムスArchaeornithomimus、アンセリミムスAnserimimusなどアジア産のもの、ストゥルティオミムスStruthiomimus、ドロミケイオミムスDromiceiomimusなど北アメリカ産のものがあり、いずれも歯をもたない。全長は約3~4メートル、体重は約140~180キログラム程度。
[小畠郁生]