翻訳|oven
食品を蒸し焼きにするための調理器具。天火ともいう。一般に箱形で、熱せられた空気と食品から発生する水蒸気を器内に閉じ込め、100℃以上に加熱して調理を行う。したがって直火(じかび)焼きのように食品が強い熱で焦げたり、強い収縮で固くなったりすることもなく、口あたりや風味のよい料理がつくりやすい。
オーブンの原理は非常に古く、1万年以上前から知られていたようで、古くは土に掘った穴の中で十分に火を燃やしたあと、動物などの獲物を入れ、その上から焼いた小石や土をかけて蒸し焼きを行っていた。のちに土でつくったかまど形オーブンやれんが積みオーブンへと発展するが、金属が使えるようになって、現在のような小形のオーブンがつくられるようになった。すでにローマ時代にパンが焼かれていることから、この時代にかまど形オーブンが用いられていたことが想像できる。
加熱方式が、ガスのものと電気のものに大別できる。ガス式は、下部より加熱して上部からも熱気を出す形式であるが、電気式は上下にヒーターが配置されている。ガス、電気とも、熱気をファンで送り込むもの、電子レンジと組み合わせたもの、水蒸気を送り込めるものもある。そのほか、自動温度調節、自動調理、イースト発酵装置、赤外線による焦げ目ヒーターなど多くの機能をもったものがつくられている。なお、日本ではこんろの上にのせる箱型の上置式天火が明治時代からあったが、器内温度にむらがあり、保温力の点でもオーブンとしての性能は劣っていた。
[河野友美・大滝 緑]
オーブンは、大量の熱エネルギーを器内に平均に分布させて加熱するのが特徴なので、あらかじめ器具を十分に熱して扉の開閉を必要最低限にとどめ、器内の温度を下げないようにすることがたいせつである。なおプディングのような低温加熱の調理では、天板に水を張って使用する。
[河野友美・大滝 緑]
かまどのこと。一般には箱型の加熱調理器具で,天火ともいう。加熱された壁面の放射熱と高温の空気の対流で食品を蒸焼きにする。土の中に食物を埋め込み,上で火をたいて蒸焼きにする方法は古くから行われていたが,本格的にはパンを焼く道具として発達した。蒸焼きは直火焼きに比べ熱の当りがやわらかく,内部まで十分に加熱され,しかもこうばしく焦げ色がつく。日本ではこんろの上にのせて使う上置式が明治時代からあったが,ガスバーナーつきの単独オーブンが国産されたのは1916年ごろである。第2次大戦後パン焼器として電気オーブンが発売されたが普及せず,一般家庭ではガス台にかける上置式が主流だった。その後,家庭電化製品の高性能化が進み,電子レンジと組み合わされた複合機能のものが出た。オーブン全体としては,43.9%(1979年全国消費実態調査)の普及率である。用途としてはパン焼きをはじめローストものやグラタン,なべごと入れて煮込料理,天板に湯をはって蒸料理にも使える。内部温度は約100~250℃で,料理によって適温を選ぶ。
→竈(かまど)
執筆者:佐々田 道子
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…農業の主力となった主食作物の穀類,いも類は,すべて加熱してβ‐デンプンをα‐デンプン化して食べやすくする料理法が必要なものである。主食の料理法の地方的差異は多いが,巨視的にいえば,麦・雑穀地帯では粉食が発達し,ヨーロッパ,北アフリカから西アジアにかけては,オーブンを使用してパンに加工することが特徴的である。稲作地帯では粒食で煮たり,蒸したりして料理をする。…
※「オーブン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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