電子レンジ(読み)デンシレンジ

デジタル大辞泉 「電子レンジ」の意味・読み・例文・類語

でんし‐レンジ【電子レンジ】

マイクロ波によって分子が振動して発熱する現象を利用して、食品短時間に加熱する調理器。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「電子レンジ」の意味・読み・例文・類語

でんし‐レンジ【電子レンジ】

  1. 〘 名詞 〙 ( レンジは[英語] range ) マイクロ波で加熱する調理器具。高周波電場の中では分子が激しく振動して発熱することを利用したもの。短時間で均一な加熱ができる。〔流通革命(1962)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「電子レンジ」の意味・わかりやすい解説

電子レンジ
でんしれんじ

マイクロ波の性質を利用して食品を加熱する調理器具。1955年アメリカのレイセオン社で初めて商品化され、日本では61年(昭和36)東京芝浦電気(現東芝)で国産1号機がつくられた。マイクロ波は電磁波の一種で、ガラス、紙などを透過し、金属によって反射されるが、食品、水などには吸収されやすい性質をもっている。吸収された電磁波エネルギーは熱に変わり、その物質を発熱させる。電子レンジで使われている電波は、国際的に割り当てられた2450メガヘルツという高い周波数で、マグネトロンで発生させる。マグネトロンは従来レーダーや通信に用いられていた超高周波用の真空管で、加えられた高圧直流電力の60%以上をマイクロ波電力に変換できて効率が高い。マグネトロンで発生させたマイクロ波は、食品にできるだけ均一に当て、加熱むらが生じないように金属製の攪拌(かくはん)翼を設けるか、食品をのせ加熱中回転させるようにくふうされている。一般に食品はマイクロ波の吸収が多く、内部で熱に変換されるが、この現象に寄与しているのは、食品の中に60~96%含まれている水である。電子レンジは、加熱品目に応じてその出力を可変できるものがあり、弱い出力は卵料理やなま物の解凍に使われている。

 人間が考え、行ってきた調理法は、食品の外部から熱を加え、熱伝導によって内部まで加熱調理する方法であった。ところが食品は一般に熱伝導が低いために、短時間で中心まで急速に加熱して調理しようとすれば、表面と中心との温度勾配(こうばい)が大きくなる。そのため、表面は過熱して組織が破壊し、焦げなどを生じて栄養分が失われる結果となる。これに反し、マイクロ波による加熱調理は、ガラス、陶磁器プラスチックなどの電波を通しやすい容器を使って加熱すると、食品自体が内部から加熱するので、調理品目によってはほかの加熱方法より効率が高く、調理時間が短縮され、ビタミンの残存率も高くなる。また電波を通しやすい材料の容器やシートで包んだまま加熱する方法、冷凍食品の解凍、温め加熱、殺菌効果の利用なども、電子レンジの特徴を生かした利用方法といえる。

[慶野長治]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「電子レンジ」の意味・わかりやすい解説

電子レンジ (でんしレンジ)

通信にも利用されるマイクロ波帯の電磁波を使って食品を加熱調理する器具。1955年アメリカのレーセオン社が商品化,日本では61年国産1号機が作られた。当初はレストラン,列車食堂などもっぱら業務用であったが,65年に家庭用が発売されて普及し始め,81年には37.4%(経済企画庁調)の普及率に達している。

 マイクロ波を発生するマグネトロンとその電源と冷却装置,調理物を入れるオーブン,マイクロ波をオーブンに導く導波管,マイクロ波を乱反射させる可動の金属板,タイムスイッチなどからなる。電子レンジに利用されるマイクロ波の周波数は国際的に2450MHz(波長約12cm)が割り当てられている。1000~3000MHzのマイクロ波は空気,ガラス,陶磁器,プラスチックなどは透過し,金属では反射されるが,水には吸収されやすい。マイクロ波は食品中の水分に作用し,まず水分子を分極させて+-極を持つ電気双極子を作り出し,それを高い周波数で振動,回転させることによって分子間に摩擦熱をおこさせ,その熱を利用して食品を発熱させる。加熱速度が速い,食品だけを加熱するのでむだがない,栄養価の損失が少ない,殺菌効果が高いなどの長所がある反面,高価格,金属製容器やアルミホイルが使えない,熱効率が低い,焦げめがつかないなどの短所もある。発売初期において電波漏れが問題となり,1970年に電波漏洩技術基準が制定,実施された。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「電子レンジ」の意味・わかりやすい解説

電子レンジ【でんしレンジ】

マイクロ波を食品にあて誘電加熱するレンジ。連続出力マグネトロンなどを用いた発振器で2450MHzのマイクロ波を発し,食品中の水分を選択加熱する。したがってガラス,陶磁器,プラスチックの容器は加熱されない。ごく短時間に内部まで一様に加熱できるのが特徴。1955年に米国で商品化され,日本では1961年から作られている。
→関連項目オーブン高周波加熱

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電子レンジ」の意味・わかりやすい解説

電子レンジ
でんしレンジ
microwave oven

マイクロ波などの高周波電界による誘電加熱現象を利用して,調理する器具。食品を高周波電界の中に入れると,食品がエネルギーを吸収して内部で発熱し,食品の外部を熱する従来の調理法に比し短時間で料理ができる。食品は陶磁器,耐熱ガラスなどの容器に盛付けたまま,または電波を通しやすい材料に包んだまま調理・再加熱できる。冷凍食品の解凍にも適する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

食器・調理器具がわかる辞典 「電子レンジ」の解説

でんしレンジ【電子レンジ】

箱形の庫内に食品を密閉し、マイクロ波を発生させて食品に当て、食品に含まれる水の分子などを振動させて熱を生じさせることによって食品を温める調理機器。短い調理時間で効率的に加熱する。◇「レンジ」と略す。1945年ごろに、アメリカのレイセオン社のパーシー・スペンサーが開発した。

出典 講談社食器・調理器具がわかる辞典について 情報

栄養・生化学辞典 「電子レンジ」の解説

電子レンジ

 マイクロ波を利用して加熱する器具.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の電子レンジの言及

【料理】より


[加熱]
 加熱の際の媒体として水を利用するのを湿熱と呼び,水を利用しない加熱を乾熱と呼ぶ。火を使用せずに加熱する新しい方法として出現したのが,マイクロ波を照射する電子レンジである。(1)乾熱 食料を直接火の上にかざす直火焼きは人類最古の加熱法であり,くし焼き,網焼きはその延長上にある。…

※「電子レンジ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android