オールコット(英語表記)Olcott, Henry Steel

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オールコット」の意味・わかりやすい解説

オールコット
Olcott, Henry Steel

[生]1832.8.2. アメリカ合衆国ニュージャージー,オレンジ
[没]1907.2.17. インド,アディアール
アメリカ合衆国の作家,弁護士,哲学者。神智協会(→神智学)の共同設立者。1858~60年『ニューヨーク・トリビューン』紙の農業担当編集者を務め,1863~66年戦争省や海軍省大佐として特別委員を務めた。1866年に弁護士資格取得。1875年にエレナ・ブラワツキー,ウィリアム・クアン・ジャッジらとともに神智協会を設立し,会長に就任した。1878年にブラワツキーとともにインドを訪れ,翌 1879年ともにインドに移り住み,1882年マドラス近郊アディアールに神智協会本部を設置した。また,アニー・ベサントと協力してワーラーナシに中央ヒンドゥー大学を設立し,ベサントとともにインドやセイロン(→スリランカ)で神智学の教えを説いて回った。セイロンの仏教徒(→セイロン仏教)の教育向上に尽力し,その努力は三つの大学と 250の学校に結実した。オールコットは仏教徒に広く受け入れられ,彼らに多大な影響を及ぼした。また東洋の哲学思想に共感し,ヒンドゥー哲学(→インド哲学)の復活にも力を貸し,バラモン学者によりバラモン階級が身に着ける「聖なる糸」を与えられた。1888~1907年機関紙 "Theosophist"の編集長を務めた。主著『仏教問答』Buddhist Catechism(1881)は多く言語に翻訳された。

オールコット
Alcott, Louisa May

[生]1832.11.29. ペンシルバニア,ジャーマンタウン
[没]1888.3.6. マサチューセッツボストン
アメリカ合衆国の作家。エーモス・ブロンソンオールコットの娘。父親の交友関係からラルフ・ウォルドー・エマソンらと親しく,第1作『花のお話』 Flower Fables (1855) はエマソンの子供たちに話して聞かせた童話。少女時代から生活上の苦労を重ね,南北戦争には看護師として従軍,その体験は書簡集『病院のスケッチ』 Hospital Sketches (1863) に描かれている。生活のために書いた自伝的小説『若草物語』 Little Women (1868~69) が大成功を収め,以後少女小説の作者として名をなした。『ジョーおばさんのがらくた入れ』 Aunt Jo's Scrap Bag (6巻,1872~82) などのほか,本格小説もあるが成功しなかった。

オールコット
Alcott, Amos Bronson

[生]1799.11.29. コネティカットウォルコット
[没]1888.3.4. ボストン
アメリカの教育家,社会改革論者,思想家。エマソンの超絶主義運動に参加。 1834年ボストンに幼児の学校を開き,ペスタロッチの方式を取入れる実験を試みたが成功せず,1839年に閉校。 1842年にはマサチューセッツ州北部で「フルートランズFruitlandsと称するユートピア的共同体を興したが,わずか7ヵ月で解散。その後コンコードの学校の管理者となってようやく生活の安定を得,娘の L.M.オールコットが『若草物語』で成功してからは,衣食の心配はなくなった。主著『子供たちとの対話-福音について』 Conversations with Children on the Gospels (1836~37) ,『エマソン伝』 Ralph Waldo Emerson (1865) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オールコット」の意味・わかりやすい解説

オールコット
おーるこっと
Louisa May Alcott
(1832―1888)

アメリカの女流作家。ペンシルベニア生まれ。父は超絶主義者として有名な教育者のエーマス・ブロンソン・オールコット。生涯のほとんどをコンコード、ボストンで過ごし、エマソン、ソローや父によって知的な教育を受けた。生計のため『アトランティック・マンスリー』誌に短編を寄稿したりして、南北戦争に看護婦として従軍中の体験をもとにした『病院点描』(1863)で世に出るようになった。生涯に小説、詩、随筆など300近い作品を残したが、そのなかで、自分の家庭をモデルにした自伝的な少女小説『若草物語』(1868~1869)で児童文学作家としての名声を確立した。その後、同じ素材をもとにして、一連の家庭小説を書き続けた。明るいユーモアにあふれた家庭生活を描いた彼女の小説は、心理的な洞察、写実的な性格描写に優れ、いまもなお、アメリカばかりでなく、翻訳されて多くの国に読者をもっている。

[秋山 健]

『吉田勝江訳『昔気質の一少女』(角川文庫)』『松原至大訳『ライラックの花の下』(角川文庫)』『村岡花子訳『八人のいとこ』(角川文庫)』『村岡花子・佐川和子訳『花ざかりのローズ』(角川文庫)』『松原至大訳『花物語』(角川文庫)』

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