翻訳|allspice
フトモモ科(APG分類:フトモモ科)の常緑高木。高さ6~9メートル、葉はゲッケイジュに似る。夏季、小枝の先に小さな白い花を多数つける。果実は直径約1センチメートルで、小さい種子が1、2個入っている。ジャマイカ原産で、メキシコからブラジルに至る一帯で古くからスパイスとして利用された。
実を乾燥させたものを香辛料として使う。別名を百味胡椒(ひゃくみこしょう)、三香子(さんこうし)ともよび、ナツメグ、クローブ、シナモンの三つの香りをもっており、オールスパイスの名もこれにちなむ。ペパー(胡椒)のような辛味はないが、さわやかな芳香と甘味とほろ苦味(にがみ)を兼ね備えているので、一人三役の働きをする香辛料として有用である。
オールスパイスは、コロンブスのアメリカ大陸発見までは西欧諸国に知られていなかったが、マヤ帝国のインディオたちは、彼らの偉大な王の死体を、オールスパイスで香り詰めにしてミイラとして保存していた。
この香辛料は、甘・辛どちらの料理にもよくあう万能香辛料なので、オイスターシチュー、トマトスープ、ポットロースト、サラダドレッシング、ビーフシチュー、スパゲッティソース、ミートローフ、ケーキ類などに使われる。北欧諸国では遠洋漁場でとった魚を運ぶとき、樽(たる)の中に魚といっしょにオールスパイスの実を入れ、腐らないようにしていた。
[齋藤 浩 2020年8月20日]
フトモモ科の常緑小高木。ピメントpimentoともいう。果実は香辛料として著名で,これ一品でスパイスの三大名品チョウジ,ニッケイ,ニクズクの香味をあわせもつというところからこの名がある。三香子または百味コショウの名もある。高さ6~9mになり,対生する葉はゲッケイジュに似る。夏に小枝頂に集散花序を出し,小さな白い花を多くつける。果実は暗紫色で直径約1cm,中に1~2個の種子がある。ジャマイカ原産で,同島を中心にメキシコからブラジルに至る一帯で古くからスパイスとして利用されていた。ヨーロッパには新大陸発見以後に紹介された。完熟前の果実を採集し,約1週間天日乾燥し,赤みをおびた暗褐色になったものが香辛料のオールスパイスである。完熟果は甘いが芳香はない。香りの成分はオイゲノールなどである。果実からとった精油(ピメント油)は製菓用に使われる。ラム酒にひたした香料(ベイラム)は整髪料として有名である。
執筆者:星川 清親
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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