日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニクズク」の意味・わかりやすい解説
ニクズク
にくずく / 肉豆蔲
[学] Myristica fragrans Houtt.
ニクズク科(APG分類:ニクズク科)の常緑高木。インドネシアのモルッカ諸島原産。現在はインドネシア各地、マレー半島、グレナダ、レユニオン、モーリシャスなど熱帯に産する。高さ10~20メートル。葉は長楕円(ちょうだえん)形で革質。雌雄異株。雌・雄花ともに花弁はないが、3裂した萼片(がくへん)が黄白色で芳香がある。雄花序は数花からなり、雄しべは9~12本。雌花は単生で、垂れ下がる。果実は小形の洋ナシ形で長さ4~6センチメートル、橙黄(とうこう)色に熟すと厚さ約5ミリメートルの果皮が裂けて種子を露出する。種子は長楕円形で長さ3センチメートル、褐色で表面は赤色肉状の仮種皮(かしゅひ)で網状に覆われる。種子をナツメグnutmeg、仮種皮をメースmaceといい、ともに香辛料として有名である。
高温・湿潤な気候に適し、繁殖は普通実生(みしょう)による。苗箱に播(ま)き、約30センチメートルになったら定植する。8~9年目から結実し、壮樹では1本当り4000個がなり、60年間くらい結実を続ける。
[星川清親 2018年7月20日]