カスミソウ(読み)かすみそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カスミソウ」の意味・わかりやすい解説

カスミソウ
かすみそう / 霞草
[学] Gypsophila

ナデシコ科(APG分類:ナデシコ科)の耐寒性一年草または多年草。茎は繊細でよく分枝し、伸び広がる。葉は対生し、線形、全縁で、開花期には少ない。花色は白、濃桃、淡桃。名は、花をつけた草姿を霞がただようようすに見立てたもの。アジア、ヨーロッパ、アフリカ北部に60種以上分布する。花壇、切り花、鉢植え用とし、とくに近年、シュッコン(宿根)八重カスミソウは盛り花の添え花として多用され、通年栽培も行われ、鉢植え用品種のレペンス種もよくつくられる。よく栽培されるものに次のような種類がある。エレガンスG. elegans Bieb.はムレナデシコともいい、カフカス原産の耐冬性一年草。高さは約50センチメートル、5~6月に白色の5、6弁で径約1センチメートルの小花を密に開く。品種にコベントガーデンマーケット、これより開花が1週ほど遅れるが大輪のマキシマアルバ、濃桃色クリムソン、カーミネアなどがある。シュッコン(宿根)カスミソウG. paniculata L.はコゴメナデシコともいい、地中海沿岸原産の多年草。高さ1メートルに達し、小花を多数つける。品種に白色八重咲きのブリストルフェアリー、これより開花が半月ほど遅れる大輪のパーフェクタ、花の大きさ、開花期がこの2品種の中間の性状をもつダイアモンドなどがある。また桃色種には淡桃のフラミンゴ、濃桃で最新品種のレッドシィーがある。

[魚躬詔一 2021年1月21日]

栽培

日当りのよい、弱アルカリ性土壌で排水のよい所なら容易に栽培できる。エレガンスは9月中・下旬に床播(とこま)きし、11月中旬に定植するが、10月上旬に直播(じかま)きし、早春に間引きするほうがよく育つ。寒地では3~4月に直播きする。シュッコンカスミソウの一重咲き種は4~5月播種(はしゅ)、9月定植とするが、株分けでも殖やせる。従来、ブリストルフェアリーなど八重咲きのものは、11月または2~3月に本属のパニキュラータまたはマンギニーの根に接木(つぎき)するのが普通とされていたが、1970年代以降、ウイルス病対策として成長点培養(メリクロン)が行われるようになり、その後の急速増殖の技術の進歩により、現在は流通される苗のほとんどが成長点培養のものとなっている。なお、普通に庭植えするには、10月と3月が適期である。

[魚躬詔一 2021年1月21日]


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改訂新版 世界大百科事典 「カスミソウ」の意味・わかりやすい解説

カスミソウ
Gypsophila elegans Bieb.

5月に小花が群れて咲くので切花や花壇に適したナデシコ科の秋まき一年草。原産地はカフカス地方。草丈は50~60cm。葉は披針形で対生。多数の枝を分けて茂り,花をつけるとそのもとから小花梗が二つに分かれ出てのび,花をつけることを繰り返す。花は白色5弁で杯状に開く。変種に赤花で茎葉も赤みを帯びるアカバナカスミソウvar.carminea Hort.があるが,性状はカスミソウに同じ。種まきは9月下旬。切花用の栽培や花壇には元肥を入れた畝に直接ばらまきし,生育にともない間引きを重ねて春に開花させる。霜のきびしい所では軽い霜よけをする。まきどきを早めて7月下旬に種をまけば,草丈15~20cmで晩秋に開花するから鉢栽培とするとおもしろい。

 カスミソウ属Gypsophilaはヨーロッパからアジアに数十種も分布しており,宿根性の宿根カスミソウG.paniculata L.は白,ピンクの一重咲き,八重咲きがあり,白八重咲き種はもっぱら切花用として栽培される。ほかに数種が栽植されている。
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百科事典マイペディア 「カスミソウ」の意味・わかりやすい解説

カスミソウ

ムレナデシコとも。カフカス原産のナデシコ科の一年草。秋まきで,花壇,切花用に栽培される。草たけ30〜50cmでよく枝分れし,白い小型の5弁花をたくさんつける。桃色花のものもある。シュッコンカスミソウはヨーロッパ,中央アジア原産の多年草で,前者よりさらに分枝が多く,白色または桃色の小さな花が密について四方に広がり,切花向き。八重咲品種もあり,つぎ木でふやす。

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