翻訳|chameleon
トカゲ類のうちで,形態的にも生態的にももっとも樹上生活に適応したカメレオン科Chamaeleonidaeに属する爬虫類の総称。カメレオン属Chamaeleo約74種,フトオカメレオン属Brookesia7種,カレハカメレオン属7種がアフリカの大部分とマダガスカル島にほぼ半数ずつ分布するが,チチュウカイカメレオンChamaeleo chamaeleon(英名common chameleon)1種だけはスペイン南部,北アフリカ,アラビア半島,インド,スリランカに分布する。すべての種類が形態的に類似しており,全長20~30cmほどのものが多いが最大はマダガスカルオオカメレオンC.oustaleti,パースンカメレオンC.parsoniiなどの全長60cm,最小はヒメカメレオンB.nasusなどの全長3~4cm。ケニア,タンザニアの高地に分布するジャクソンカメレオン(全長30cm)は動物園などでも飼育され親しまれている。
カメレオン類は完全な樹上生活者としてきわめて分化した形態をしており,いくつもの特徴を備えている。著しく側扁した胴は太い肋骨で内張りされ,肩帯から下方にのびる四肢によって支えられて,1本の枝の上でも安定した姿勢を保てる。指は5本あるが,2本と3本の2束に結合して向き合い,指先だけが離れ,また鋭いつめがあり強く枝を握ることができる。眼は上下のまぶたがくっつき,中央に小孔が開いたドーム状の皮膚で覆われ自由自在に回転する。そして左右別々の角度に休みなく動かせて,獲物の飛来や縄張への侵入者を監視する。餌が舌の射程内に止まるや左右の眼で焦点を合わせ,すばやく舌を発射して捕える。このカメレオンのトレードマークでもある長い舌は,ふだんは舌骨につながる逆V字形の骨のまわりに収められている。餌はバッタ,イナゴ,ナナフシ,ハエなどの昆虫類で,大型種は小さなトカゲやネズミをも捕食する。
カメレオンはまた体色変化の名手でもある。体色は黄色,緑色,褐色系統が基本的な色で,めまぐるしくさまざまな色彩,斑紋に変化させる。とくにライバルと対決するときなどいわゆる感情による変化が著しいが,光の強弱や温度変化によっても変わる。変色は,眼からの光刺激が中枢神経系を介して色素細胞に伝えられて起こるが,皮膚の刺激は直接色素細胞に伝えられる。カメレオンの複雑な体色は,結果的に樹上では保護色となり,天敵から身を守り,餌を待伏せするのにつごうよく,さらにのろい行動も保護色の効果を高めている。しかし嗅覚(きゆうかく)に頼る樹上性のヘビや,目の鋭い猛禽(もうきん)類は手ごわい天敵となる。カメレオンの大半は大きな頭部にヘルメットと呼ばれる堅い骨質の突起物や角状突起をもち,頭部を保護するとともに輪郭をぼかす働きをする。背面や腹面の正中線上にあるとげ状の飾りうろこもやはり体の輪郭をぼかす効果がある。
カメレオンの大部分は卵生で,地上に穴を掘って20~50個ほどを産卵し,孵化(ふか)に3~8ヵ月ほどを要する。一部の卵胎生種は薄膜に包まれた子を枝や葉に生みつける。アフリカ中部とマダガスカルに分布する全長3~10cmほどのコノハカメレオン類は,尾が短く飾りうろこもほとんどない。地上に降りてゆっくり歩くこともあり,褐色系の体は,あたかも枯葉が風に吹かれていくように見える。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
爬虫(はちゅう)綱有鱗目(ゆうりんもく)カメレオン科に属するトカゲの総称。この科Chamaeleonidaeの仲間は形態的に多くの特徴をもつ。カメレオン属Chamaeleo70種、コノハカメレオン属Brookesia16種が、サハラ砂漠を除くアフリカの大部分とマダガスカル島とにほぼ半数ずつ分布し、チチュウカイカメレオンC. chamaeleon1種のみがスペイン南部、北アフリカ、アラビア半島、インド、スリランカに分布し、4亜種に分けられている。
[松井孝爾]
すべての種が形態的に類似し、全長20~30センチメートル、尾はその2分の1よりやや長いが、マダガスカル島産のパースンカメレオンC. parsoniiやマダガスカルオオカメレオンC. oustaletiは全長60センチメートルに達する大形種であり、他方、ヒメカメレオンB. nasusなどは全長3~4センチメートルにすぎない。カメレオンはアガマ科Agamidae系統から分化したと考えられ、トカゲではもっとも樹上生活に適応した形態をしている。胴は著しく側扁(そくへん)し、肩帯から斜め下方に張り出した四肢で支えられ、内部を太い肋骨(ろっこつ)で支えられる。前後肢ともに、5本の指は2本と3本の2束に癒合し、向かい合って枝を強く握ることができる。指は前肢では外側に2本、内側に3本、後肢ではその逆になっており、遊離した指先には鋭いつめがある。尾の先端部は枝に巻き付くが、通常は垂直方向に巻いている。頭部は大きくて角張り、骨質の兜(かぶと)状隆起や角(つの)状突起がある。ジャクソンカメレオンC. jacksoniiの雄は吻端(ふんたん)に3本、フィッシャーカメレオンC. fischeriは1対の角状突起をもつ。また胴の背面と腹面の正中線上に飾り鱗(うろこ)が並ぶ種類も多い。目は、上下の眼瞼(がんけん)がドーム状に癒着して細鱗に覆われ、頂点に小孔が開き、左右別々に回転して異なった方向を見ることができる。
[松井孝爾]
カメレオンは昼行性で、大半が樹上性であり、一部が地上にも降りる。行動はきわめてのろいが、細い1本の枝の上でも四肢で胴を持ち上げながら歩ける。餌(えさ)の昆虫、クモ類をみつけると、左右の目で焦点をあわせ、尾で枝を巻き体に反動をつけながら、舌を発射する。舌は環状の筋肉の束と細長い筋肉からなり、通常は圧縮して口内に収められている。舌の射出は、まず舌が収まった逆V字形をした舌骨を突き出し、環状の筋肉を引き締め、急に緩めることで行われ、数分の1秒というスピードで粘着力のある先端部が獲物に命中する。また、カメレオンは巧みな体色変化で知られるが、体色は環境ばかりでなく明暗や温度の変化、繁殖期の雄の争いなど感情によってもめまぐるしく変化する。大半の種が卵生で、地上に穴を掘り20~50個ほどを産卵するが、一部の種では卵胎生である。
[松井孝爾]
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