改訂新版 世界大百科事典 「カメロン」の意味・わかりやすい解説
カメロン
Julia Margaret Cameron
生没年:1815-79
イギリスのビクトリア朝時代に活躍した女性写真家。カルカッタのインド植民地政府高官の家に生まれる。1848年夫とともにイギリスへ渡った。写真をはじめたのは48歳のときで,娘からプレゼントされたカメラが彼女を新しい世界に導いた。最初はラファエル前派の絵画を模倣した宗教的,寓意的な演出写真であったが,66年ころからストレートな肖像を撮るようになる。カメラの前に立ったのは,J.ハーシェル,A.テニソン,T.カーライルなど,彼女と親しい著名人たちであった。その写真はピンボケであったりブレたりしているが,それはかえって人物の表情を生き生きとしたものにし,個性がよくとらえられている。70-75年には,テニソンの詩集《Idylls of the King》の挿絵用の写真を撮る。75年からはセイロンに移り住んだ。彼女の自由闊達な写真は,人間の本質をとらえたものとして,なお今日的である。
執筆者:金子 隆一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報