中国、南アジア、中近東、北アフリカや中南米の一部に分布している、別名内臓リーシュマニア症とも呼ばれる感染症です。リーシュマニアという原虫に感染したサシチョウバエに刺されることにより感染します。
流行している国および地域によって、ドノバンリーシュマニアに代表されるリーシュマニアの複数の種類の原虫が原因となって、似たような症状の病気を起こします。
日本にはリーシュマニア原虫を媒介する昆虫はいないので、リーシュマニア症の発生はありませんが、ごくまれに感染流行地からの輸入例がみられます。原虫が
感染して2~6カ月の潜伏期ののちに発熱で発症します。その後、肝臓・
症状が進むと全身状態が悪化し、肺炎・
しかし、血清反応は特異性に問題があり、ほかの感染症による
安全な治療法はありません。毒性の高いアンチモン剤(ペントスタム)が一般に用いられますが、嘔吐・腹痛・頭痛などさまざまな副作用があります。
感染流行地に渡航し、虫に刺された覚えがあって発熱したら、迷わず感染症の専門医を受診してください。
野崎 智義
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
リーシュマニア症の一種で、内臓リーシュマニア症ともいう。住血鞭毛(べんもう)虫類に属するドノバンリーシュマニアLeishmania donovaniによって主として脾臓(ひぞう)や肝臓などの網内細胞系および骨髄が侵され、流行地では6歳以下の小児に多くみられる全身感染症である。カラは黒い、アザールは病気を意味するアッサム地方の土語で、黒熱病、熱帯脾腫(ひしゅ)、ダムダム熱、アッサム熱など、流行地によっていろいろの呼び名がある。ドノバンリーシュマニアは、イギリスの軍医で病理学者でもあったリーシュマンSir W. B. Leishman(1865―1926)がインド駐在中に1900年発見、03年に副官のドノバンCharles Donovanが立証し、確認された。
カラ・アザールはサシチョウバエの媒介によって患者または病犬などから伝播(でんぱ)される。分布は地中海、カスピ海沿岸、東部アフリカ、インド、中国、南アメリカにわたる。潜伏期は不定であるが通常は2、3か月で、初発症状は急性上気道炎、消化器症状で始まることもあるが、不定の発熱以外に症状のないこともある。リーシュマニア侵入の直接刺激または副腎(ふくじん)皮質不全に伴って皮膚がメラニン色素沈着により黒くなる。出血傾向のある例では点状出血や紫斑(しはん)をみることもある。脾腫は著明で臍部(さいぶ)(へそ)に達することもあるが、肝腫は中等度で柔らかい。一般的治療として高タンパク食とビタミン剤を投与する。特効薬には五価アンチモン剤があるが、無効の場合にはジアミジン系のペンタミジンなどを用いる。
[松本慶蔵・山本真志]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ハエの体内では,長さ10~20μmの細長い形をしており鞭毛を有する。リーシュマニアには,黒熱病(カラアザール)をひき起こすドノバニL.donovani,東洋腫をひき起こすトロピカL.tropicaなどが知られている。黒熱病では,サシチョウバエに刺された後,1ヵ月後くらいから脾臓が腫大し,皮膚に黒褐色の沈着が生じる。…
※「カラアザール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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