カワカマス(英語表記)pike
Esox reicherti

改訂新版 世界大百科事典 「カワカマス」の意味・わかりやすい解説

カワカマス
pike
Esox reicherti

ニシン目カワカマス科の淡水魚カモくちばしのような形をした口をもつのでカモグチとも呼ばれる。全長1m以上に達する。鋭い歯をもちきわめて貪食(どんしよく)で,各種魚類はいうまでもなく,ときには小型哺乳類や水鳥までも捕食する。海産のカマス類に口の形態,貪食の点で似ているのでカワカマスと呼ばれるが,両種は分類学上はたいへん離れた類縁関係にある。英名と同じくパイクと呼ばれることも多い。サハリン以北,バイカル湖以東のシベリア,中国北東部の諸水系に広く分布している。体は細長くやや側扁する。体色は暗緑色で,腹面淡色。頭部,体側面,各ひれの表面に眼より少し小型の濃紅褐色の斑紋が散在する。背びれとしりびれは,体の後半部に対在する。水のきれいな河川にすみ昼間はやや深いよどみに潜み,夜間活発に行動する。産卵は2月下旬から4月初旬に行われ,雌雄が対をなし,水生植物に卵を産みつける。卵は約2週間で孵化(ふか)する。本属魚類には,本種のほかに4種が知られ,そのうち3種は北アメリカ大陸北東部に分布する。本属魚類はすべて北半球の寒帯亜寒帯域の淡水に生息する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カワカマス」の意味・わかりやすい解説

カワカマス
かわかます / 川魣
pike

硬骨魚綱サケ目カワカマス科Esocidaeの淡水魚の総称、またはそのなかの1種。北半球の温帯、亜寒帯に分布し、流れの緩やかな湖沼や川にすむ。日本にはいない。エソックス属Esoxのみで、北アメリカ東部に3種、シベリアに1種、亜寒帯の周域に分布する1種エソックス・ルチウスEsox luciusが知られている。化石はヨーロッパにおいて新生代第三紀の漸新世層から出土している。全長1メートルを超える大形魚で、体は丸太ん棒状。吻(ふん)は長く伸び扁平(へんぺい)でアヒルの嘴(くちばし)に似ている。口裂が大きく歯が鋭い。歯がイヌの牙(きば)に似ていることから中国で狗魚(コウユイ)とよばれる。英名のパイクもスパイク(大釘(おおくぎ))のような歯をもつことに由来する。背びれと臀(しり)びれは体の後ろの尾びれの近くにある。体は小さな円鱗(えんりん)に覆われる。

 淡水の猛魚であり、水草茂みや浮木などに隠れて獲物を待つ。魚のほかカエルや水鳥なども捕食し、産地では恐れられている。産卵期は3~7月で、4年で産卵する。雄は雌よりやや小さく早熟である。肉は白身で食用にされる。アメリカ大陸では大物釣りの対象として人気がある。カワカマスEsox reichertiはカモクチともよばれ、樺太(からふと)(サハリン)からバイカル湖にすむ。

[中坊徹次]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カワカマス」の意味・わかりやすい解説

カワカマス
Esox reichertii

カワカマス目カワカマス科の淡水魚。全長約 1m。体は細長く,青灰色で,腹面は淡色である。吻は縦扁し,カモに似ることから,カモグチとも呼ばれる。アムール川,サハリン,モンゴルに分布する。

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