アメリカの鉄鋼王。貧しい田舎の少年から努力して大企業家となり,一躍億万長者になるという,アメリカにおける立身出世物語の典型的なヒーロー。父親はスコットランドの織物工で,1848年一家をつれてアメリカに移住するが事業に失敗,家族は辛酸をなめる。そこで13歳からボイラー焚きとして働きはじめ,電信会社のメッセンジャー・ボーイなどをして働く。ついでペンシルベニア鉄道で働くが,ここで上司に認められ,59年ピッツバーグ地区の監督に抜擢された。向上心に燃えるカーネギーはこれで満足せず,種々の事業に関係しながら資金をため,南北戦争のブーム期にその蓄積を鉄鋼業に投資してその事業の基礎を築いた。いち早くイギリスからベッセマー製鋼法を導入して,75年ピッツバーグに最新式の製鉄工場エドガー・トムソン工場を完成させたのは有名。以後カーネギーは他の製鉄会社を買収して鉄鋼王としての道を歩み,1901年鉄鋼大合同によって資本金10億ドルのUSスチール会社が成立すると,カーネギー製鋼会社を売却して引退した。晩年は慈善王として知られ,カーネギー工科大学,カーネギー財団などを設立して社会に貢献する一方,その莫大な資産を教育研究機関・平和機関に投じるなど,慈善事業家として有名となった。貧しい少年たちを鼓舞したという意味で,アメリカ的ヒーローといってよい。
→国際平和カーネギー基金
執筆者:鳥羽 欽一郎
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アメリカの産業企業家、慈善事業家。スコットランドの貧しい織工の家に生まれ、1848年一家とともに渡米。紡績工を振り出しに、いくつかの職業を経たのちペンシルベニア鉄道に職を得、管理者の地位に昇進した。しかし、鉄道建設が急速に進むありさまを目の当たりにみて、鉄道経営よりも鉄道建設資材の供給に関心をもち、それまでに得た投資による利益を元手に製鉄業に進出した。主力製品は鉄レールであったが、やがてイギリスで製鋼法の発明家ベッセマーと知り合ったのを機に「鉄の時代は去った。鋼鉄こそ王者だ」と確信するに至り、70年代の不況のさなかに製鋼所の建設に着手した。80年代にはいくつかの競争企業を支配下に収め、90年代には五大湖周辺の鉱床、炭鉱、船舶、鉄道を買収、99年にはこれらの事業を統合してカーネギー製鋼所に改組し、原料から完成品に至る一貫生産体制を確立した。しかしまもなく、鉄道から鉄鋼へと支配網を拡大しつつあったウォール街の金融集団との鋼製品市場をめぐる角逐で苦境にたち、1901年モルガン商会に企業を売却し、実業界より退いた。以来18年、「富は神より委託されたもの」との信念に基づき、今日に残るホール、財団、カーネギー工科大学などの教育施設などを設立し、慈善事業に携わるかたわら、事業と社会のあり方を説く著述活動に専念し、残された第二の人生を送った。
[小林袈裟治]
『坂西志保訳『鉄鋼王カーネギー自伝』(角川文庫)』▽『坂西志保訳『富と福音――カーネギー自伝』(『世界の人間像5』所収・1961・角川書店)』▽『J・チェンバレン著、宇野博二訳『アメリカ産業を築いた人びと』(1965・至誠堂)』
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1835~1919
アメリカの実業家。両親とともにスコットランドから移住,貧困のなかで実業の才を現し,アメリカ製鋼業を躍進させ,業界の王者となった。晩年,会社をモーガンらに売り渡し,文化社会事業に専念した。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…国際相互理解と世界平和の推進を目的に,1910年A.カーネギーによって設立されたアメリカの事業財団。カーネギー国際平和財団とも訳す。…
…アメリカ最初の公共図書館ボストン市立図書館の成立は1854年のことである。しかし公共図書館の先進国イギリスやアメリカに,実際に公共図書館が開花するには,1880年代から1920年代へかけての,A.カーネギーによる図書館建築のための寄付行為が大きな刺激となった。満足に学校教育を受けないで成功したカーネギーにとって図書館は自分の学校であった。…
※「カーネギー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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