翻訳|gastrin
消化管ホルモン(消化器臓器の体液性調節物質)の一つ。主として胃の幽門前庭部の粘膜に存在するG細胞によって分泌される。胃酸分泌促進作用がおもな作用である。1905年イギリスのエドキンズJ.S.Edkinsにより発見され,64年アメリカのグレゴリーR.A.GregoryとトレーシーH.J.Tracyによりアミノ酸17個から成るポリペプチドとして構造式が決定された。その後,血液中ではアミノ酸34個のものが多いことがわかり,17個のものは小ガストリンlittle gastrin,34個のものは大ガストリンbig gastrinと呼ばれている。いずれも活性中心はC末端の4個のアミノ酸結合である。このことから,テトラないしペンタガストリンが合成されて,胃液検査の刺激物質として使用されている。ガストリンの分泌は,食物とくにタンパク質の刺激で最もよく起こり,G細胞が直接刺激されて起こる。血中ガストリンが高値を示す高ガストリン血症は,ゾリンジャー=エリソン症候群,悪性貧血,萎縮性胃炎,慢性腎不全などにみられる。
執筆者:谷 礼夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
G-17と略記される.消化管ホルモンの一種で,17個のアミノ酸残基からなる.食物摂取などの刺激によって胃のガストリン分泌細胞から血中に分泌され,同じ胃の壁細胞に作用して胃酸の分泌を促進する.類似した構造を有するコレシストキニンを含めてガストリンファミリーとよばれている.[CAS 144696-56-0]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…また胃内面表層の上皮からは粘液が,幽門前庭部からは炭酸水素塩(重炭酸塩)が分泌され,消化液が胃粘膜自体を消化することを防御している(これを胃粘膜防御機構という)。さらにビタミンB12の吸収を助けて貧血の予防に役だつ内因子や胃の運動と胃液分泌を刺激し,間接的に膵液の分泌をも刺激して,消化に密接に関与しているガストリンも分泌される。このように,主としてガストリンを介して胃と膵臓が相互にコントロールしあっている現象は胃膵相関ともいわれ,上部消化管の機能調整の主要な役割を果たしている。…
…精神的ストレスは消化性潰瘍の原因の一つとしてあげられるが,それはストレスによって視床下部を介して迷走神経や副腎皮質が刺激されて,胃液の分泌が盛んとなる一方,胃粘膜防御因子の活動が低下するためとされている。胃相は,食物が胃内に入ることによってひき起こされる胃液分泌で,迷走神経の作用と消化管ホルモンであるガストリンの作用による。腸相は,胃内容が腸に排出されることによって起こる胃液分泌であるが,上記2相に比べて弱く,その機序に関しては未知の部分も多い。…
…また消化管ホルモンも消化管運動の調節にあずかる。たとえば,ガストリンは胃運動の促進,幽門括約部の弛緩,食道下部括約部の収縮,小腸運動と胆囊収縮の促進をひき起こし,セクレチンは食道下部括約部,胃,小腸の運動を抑制する。 消化管運動には大別して,蠕動(ぜんどう)と分節運動の二つの型式がある。…
…主としてインシュリン(膵島のB細胞から),グルカゴン(同じくA細胞から)などの糖代謝に関係するホルモンを血液中に分泌している。
[膵液分泌と消化管ホルモン]
食物が胃の中に入ると,胃の幽門部から消化管ホルモンであるガストリンが血液中に放出され,それが胃粘膜の塩酸を分泌する細胞に働いて塩酸を出させるため,胃内は酸性となる。胃内の食物はこの酸性の状態で働くペプシンというタンパク質分解酵素によりある程度消化される。…
…(7)胃腸ホルモン 胃,十二指腸,小腸の粘膜に散在する内分泌細胞で生産分泌される。おもなものはガストリン,コレシストキニン,セクレチンである。ガストリンは17個のアミノ酸からなる。…
※「ガストリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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