朝鮮料理における漬物の総称。沈菜(チムチェ)ともいう。辛いとされる朝鮮の食べものの代表。食生活にキムチは欠かせないもので,通常食事ではスープとともに必ずつく。野菜類を塩漬し,水をきってトウガラシ,ニンニク,果物,アミやイカ,小魚などの塩辛類の薬味と合わせて漬け込む。文献上キムチがみえるのは13世紀初の李奎報の詩が初めであるが,それ以前より存在したことはまちがいない。キムチにトウガラシが使われるようになったのは17世紀後半からで,これを境にキムチの種類が豊富になった。それまではサンショウ,ショウガ,ニンニク等は用いられたが,おもに塩味だけの単純なものであった。現在キムチと呼ばれるものははなはだ多く数十種に達する。ハクサイ漬のペチュキムチ,ダイコン角切りのカクトゥギ,キュウリのオイキムチ,野菜の丸漬のトンキムチや,水分を味わう水(ムル)キムチなどがよくつくられる。ナス,ダイコン,ニンニク等をしょうゆ漬するチャンアチもキムチの一種といえる。秋の野菜の収穫期には冬に備えてのキムチづくりが町や村で一斉に始まる。キムジャンと呼ばれる朝鮮の年中行事で初冬の風物詩でもある。キムチは野菜の発酵食品で,乳酸菌が多く微生物によってつくられたビタミン類も多い。日本の漬物のように洗ってしぼることはしない。近年ソウルなどではキムチの缶詰が出回り,平壌にはキムチ工場もある。
執筆者:鄭 大聲
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朝鮮の漬物の総称で、沈菜(チムチェ)とも書く。辛いとされる朝鮮料理のなかでの代表格で、朝鮮の食生活に欠かせない菜であり、飯にキムチとスープはかならずつけられる。ダイコン、白菜(ペチュ)、青菜(あおな)類を塩漬けにしてから、薬味とあわせて漬け込む。白菜(ペチュ)ギムチを例にとると、四つ割りにした白菜の間に塩をふり、ほぼ一昼夜置いて水洗いしてから水をきり、あわせた薬味を葉の間に擦り込み、壺(つぼ)や甕(かめ)に漬け込む。薬味は、粉唐辛子、おろしにんにく、果物の細切り、ネギ、ニラ、ショウガ、昆布、塩辛などを好みで混ぜ合わせてつくる。漬けるとき落し蓋(ぶた)をして密閉はするが重石(おもし)はしない。キムチにトウガラシが用いられるようになったのは17世紀の後半ごろからで、このころからキムチの作り方が多様になった。それまでは薬味にニンニク、サンショウ、ショウガを用いておもに塩だけの単純なもので、いまでも辛くないキムチは食べられている。キムチの種類はきわめて多く、数十種に達する。おもなものは、白菜(ペチュ)ギムチのほかに、ダイコンの角切りのカットウギ、キュウリのオイギムチ、野菜を丸漬けにしたトンギムチや、水分をも食べる水ギムチなどがよくつくられる。
秋の野菜の収穫時には、冬に備えてのキムチ作りが各地で一斉に始まる。キムジャンとよばれる朝鮮の年中行事であり、これが終わらないと冬は越せないとされる初冬の風物詩である。冬以外のキムチは浅漬けが多い。水分たっぷりのよく漬かったキムチには、乳酸菌やビタミンも多く、飯とキムチだけという粗食で庶民の健康を支えた食べ物でもある。近年、日本でも朝鮮料理のキムチは普及し商品化されるようになった。
[鄭 大 聲]
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