改訂新版 世界大百科事典 「キャラバンサライ」の意味・わかりやすい解説
キャラバン・サライ
caravan sary
中東に広くみられる隊商宿のことで,ペルシア語のカールバーンサラーユkārvānsarāyに由来。商業機能のうえから二つのタイプが認められる。
第1は街道沿いに建てられた純然たる隊商宿で,商人,巡礼者,旅人を宿泊させることに基本的な機能があった。アラビア語ではこの種のものをハーンkhānということが多かった。政府・王侯貴族・商人のワクフ(寄進財産)によって建てられた場合には無料で泊まることができた。最古のものはウマイヤ朝期にまでさかのぼるが,13世紀以降盛んに建設された。第2は卸売商人の事務所として使われた。都市のバーザール(市)に隣接して建てられ,これをアラビア語ではダール・アルワカーラ,フンドゥクfunduq,カイサリーヤといった。建築構造は一般に中庭があり,そのまわりを2階建ての小部屋に区分された建物が取り囲んでいた。1階部分は商品を保管する倉庫,事務所として使われ,2階部分は宿泊施設にあてられた。中庭とバーザールを結ぶ細長い通廊(ダーラーン)は,卸売商人が小売商に品物を卸す取引場としての機能をもっていた。
キャラバン・サライを利用する商人は在地の商人でなく,その土地の市況に不案内な旅商人であることが普通で,そのため仲買人の斡旋で取引を行った。彼らはキャラバン・サライを部屋ごとに賃借し,同国・同郷,宗教・人種を同じくする者が協同で借りることが多かった。キャラバン・サライにはそれぞれ得意とする主要取引商品があり,それに従って絹,毛織物,奴隷などがキャラバン・サライの名に冠せられることもあった。
→キャラバン
執筆者:坂本 勉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報