日本大百科全書(ニッポニカ) 「キルヒマン」の意味・わかりやすい解説
キルヒマン
きるひまん
Julius Hermann von Kirchmann
(1802―1884)
ドイツの法律家、哲学者、政治家。1867年「共産主義の本質について」と題する公開講演がもとでラティボール控訴裁判所副長官を免職される。その後、プロイセン下院、ドイツ帝国議会などで自由主義左派議員として1876年まで活躍。他方、1868年以来「哲学文庫」を編集し、デカルト、スピノザ、ホッブズ、ロック、ヒュームなどの古典的哲学書の独訳および注釈つき出版事業に専念、国民教育に大きな影響を与えた。彼の名を法学史上有名にしたのは、歴史法学を批判した主著『学問としての法学の無価値性』(1848)のなかで、人為的、恣意(しい)的に制定される法律を研究する「法学の無価値性」を皮肉った次の警句である。「立法者が改正のことばを三つ語れば、すべての法律書は反故(ほご)と化する」。
[安 世舟 2015年2月17日]