キンメリア人(読み)キンメリアじん(英語表記)Cimmerians

精選版 日本国語大辞典 「キンメリア人」の意味・読み・例文・類語

キンメリア‐じん【キンメリア人】

〘名〙 (キンメリアはCimmeria) 紀元前一三世紀頃、黒海北部、ウクライナ平原に拠った民族。紀元前八~七世紀にスキタイ族に圧迫されて小アジア・シリア方面に侵入。高い鉄器文明をもち、その強大さが、ヘロドトス著書や「オデュッセイア」などに記される。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「キンメリア人」の意味・わかりやすい解説

キンメリア人 (キンメリアじん)
Cimmerians

前9世紀ころ南ロシア草原において最初に騎馬遊牧勢力を形成したイラン系民族。乗馬,騎射,車両住宅に特色があり,のちのスキタイ国家の先達である。黒海北岸やカフカス地方で発見される地下横穴式墳墓がキンメリア人のものとされる。さきにメディア人やペルシア人がイラン高原に移動したあとを追って,キンメリア人もカフカスを越えてウラルトゥ王国(ワン湖周辺)に侵入し(前722-前715),さらにアッシリア帝国を脅かした。キンメリア人はアッシリア文献にギミルライGimirrai,ガミル人として記される。キンメリア人の一部は小アジアに移動し,前7世紀の70年代から50年代にかけて,フリュギアリュディアに攻撃を加え,中部アナトリアを一時支配した。また一部はアッシリア帝国の東縁ぞいに南下して,ザーグロス山脈にも達した。ザーグロス山中から出土する,いわゆるルリスタン青銅器は,このキンメリア人の残したものであるとする説がある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キンメリア人」の意味・わかりやすい解説

キンメリア人
きんめりあじん
Cimmerian

カフカスとアゾフ海の北部に居住していた民族。キンメルCimmer, Kimmer人ともいう。その起源は明らかでないが、スキタイに追われて、紀元前8世紀末にアナトリア方面に進出したと考えられる。言語学的にみると、キンメリア人はイラン系に属すると考えられるが、その故地についてはいまだに定説がない。前717年ころ東方に進出してウラルトゥを攻撃したが、その後アッシリアのサルゴン2世に敗れ、ふたたびアナトリアに引き返した。アナトリアでは、前7世紀後半、フリギアリディアを滅ぼしている。この時期が全盛期であるが、衰退も早く、前637年から前626年に最終的に滅亡した。歴史的資料のなかでは、その後見当たらず、おそらくカッパドキア付近に定着したものとされる。

[糸賀昌昭]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のキンメリア人の言及

【スキタイ】より

…この民族の起源についてはまだ不明なところが多いが,イラン系民族であろう。スキタイ国家の出現にさきだち,アゾフ海東岸の草原地帯やクバン川流域に,キンメリア人が既に騎馬遊牧文化をつくりあげており,スキタイ文化はそれに多くを負っている。ヘロドトスによれば,スキタイ人は農耕をせず,生計は家畜にたよっている。…

※「キンメリア人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android