改訂新版 世界大百科事典 「クサカゲロウ」の意味・わかりやすい解説
クサカゲロウ (臭蜻蛉)
green lacewing
golden eye
脈翅目クサカゲロウ科Chrysopidaeに属する昆虫の総称,またはそのうちの1種を指す。この仲間は中型で翅の開張1.5~6.5cm。眼は光沢のある金緑色。体や翅脈は淡緑色ないし青緑色。レース模様の透き通った翅をもち,ひらひらと飛ぶ。名称の由来が一説にいう臭いカゲロウであるというゆえんは,種によっては虫体に触れると前胸より臭気を発するからである。世界の熱帯から亜寒帯に分布し,約1350種が知られている。日本からは約40種が記録され,成虫の発生は4月から11月におよび年に3~5世代を繰り返す。飼育例では成虫の寿命は3ヵ月を越え,産卵数は3000~4000に達し,1卵ずつもしくは10~60の卵塊として産みつける。卵の多くは緑色をし,長径1mm前後の長楕円形で,5~15mmの糸状の柄の先に支持され,植物のような外観を呈し日本では古来うどんげと呼ばれ,ヨーロッパでもコケの子囊体とみなしていたという。ほとんどすべての幼虫(aphis lion)とヨツボシクサカゲロウChrysopa septenpunctataやクモンクサカゲロウC.formosaなど,ある種の成虫はアリマキ,カイガラムシ,キジラミ,ハダニなどを捕食する有力な天敵で,幼虫期のアリマキの捕食個体数は300~600におよび,アメリカやニュージーランドでは農作物の害虫防除に役だてられている。発育日数は夏季でおよそ卵期が4日,幼虫期は10日,繭期は15日である。クサカゲロウC.intimaは翅の開張2.5~3.5cm,頭部の触角間に黒色のX形の紋,後頭に4個の小黒点がある。北海道,本州中部以北,朝鮮半島,中国,シベリアに分布し,成虫は5~8月に発生する。
→優曇華(うどんげ)
執筆者:塚口 茂彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報