日本大百科全書(ニッポニカ) 「カレー粉」の意味・わかりやすい解説
カレー粉
かれーこ
curry
日本でもっとも普及している混合香辛料。カレーとは、タミル語のカリkari(ソース)に由来するといわれている。明治の鹿鳴館(ろくめいかん)時代(1880年代)の欧風化で、日本人に最初に紹介された西洋香辛料は、イギリスの「C&Bカレー粉」であった。これは、イギリスの初代インド総督ウォレン・ヘースティングズが、インドの「カリ」を1772年に本国に持ち帰ったものを、クロス・エンド・ブラックウェル社がイギリス人にあうように混合し直したもので、のちにビクトリア女王に献上されたといわれている。
インドでは、ターメリック、クミン、ペパー、カルダモン、コエンドロ(コリアンダー)などの香辛料を混合してつくった調味料をマサラ(マサーラ)masalaとよび、日本のうま味調味料のようにどんな料理にも使っている。インドの北部地方では、主として乾燥した香辛料を石臼(いしうす)で混合粉砕して使い、南部ではなまの香辛料を石臼ですりつぶして使っている。香辛料を5~7種も混ぜたものにガラム・マサラとよばれているものもあるが、このマサラを使った料理はすべて「カリ」とよばれている。したがって、インド料理はすべてカリ料理(カレー料理)であって、その種類は300種以上もあるといわれている。炒(いた)め物、スープ、シチュー、煮物などすべてが「カリ」なのである。インドでは地方によって混ぜる香辛料の種類、割合が異なり、また各家庭においてもその処方は秘伝とされている。
日本のカレー粉は少ないもので十数種、多いもので三十数種の香辛料の粉末を混合し、焙煎(ばいせん)し、各種香辛料の香味をまとめるために3か月以上熟成させたものである。使用されているおもな香辛料には次のものがある。(1)辛味性 レッドペパー、ブラックペパー、ホワイトペパー、ジンジャー、(2)芳香性 クミン、フェニュグリーク、カルダモン、ナツメグ、シナモン、ローレル、メース、コエンドロ、ディル、セロリシード、オールスパイス、キャラウェー、タイム、(3)矯臭性 ガーリック、クローブ、フェンネル、(4)着色性 ターメリック、パプリカなどがあり、それらの配合の種類や量は各メーカーの秘密とされている。
カレー粉を小麦粉、油脂、食塩、糖、調味料などで固形ルウ化したもの、フレーク状にしたもの、顆粒(かりゅう)状にしたものなどが即席カレーとして市販されている。
[齋藤 浩]