日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラックホーン」の意味・わかりやすい解説
クラックホーン
くらっくほーん
Clyde Kluckhohn
(1905―1960)
アメリカの文化人類学者。ニュー・メキシコ州に住む先住民ナバホについて長期の研究を行った。ボアズFranz Boasに始まるアメリカ特有の「綜合(そうごう)人類学」の最後の継承者といわれ、その研究領域は自然人類学、考古学にまで及ぶ。最大の功績は1930年~1940年代のアメリカで出発した「文化とパーソナリティー」論を発展させたことで、隣接分野との学際的協力を目標としてハーバード大学に開設された社会関係学部の教授として、文化人類学と心理学、精神医学との相互協力を推進した。ただし当時の精神分析学の図式的解釈に対しては批判的で、フィールドワークの具体的資料に基づく分析の方向を強調し、ナバホをはじめ、アメリカ・インディアン諸部族の性格形成を中心に分析を進めたが、晩年には価値観の比較研究を組織的に行った。なお数回来日し、日本の文化人類学に与えた刺激は大きい。著書として共著も含め『ナバホのウィッチクラフト』Navaho Witchcraft(1944)、『ナバホ』The Navaho(1946)、『ナバホの子どもたち』Children of the People:The Navaho individual and His development(1947)、『人間のための鏡』Mirror for Man(1949)その他がある。
[祖父江孝男 2018年11月19日]
『光延明洋訳『人間のための鏡――文化人類学入門』(1971・サイマル出版会)』