フランスの技術者、物理学者。パリ生まれ。エコール・ポリテクニク(理工科大学校)に学び、1820年ロシアに行き、ペテルブルグで教師、技師を務めた。1830年に帰国、鉄道技師として働き、パリ―サン・ジェルマン間の鉄道敷設の際は、R・スティーブンソンが長い勾配(こうばい)のために機関車の設計を辞退した後を受けて、その設計、製造を行った。1834年「熱の動力について」という論文を発表、S・カルノーの熱学の業績を全面的に支持し、解析的表現をとることでその考えに光をあてた。熱素説の立場にいたが、後の絶体温度の概念につながる関数を設定し、また水蒸気についての重要な関係式(クラウジウス‐クラペイロンの式)を導いた。いわゆる「カルノー・サイクル」をp‐vグラフに初めて表現し、ケルビンやクラウジウスに多大の影響を与えた。生涯、蒸気機関に関心をもち続けたが、彼自身、独創的に問題を発展させることはなかった。1848年科学アカデミーの委員になり、スエズ運河の計画や、軍艦に蒸気力を応用する計画の委員会などで活躍した。
[高山 進]
フランスの技術者,物理学者。エコール・ポリテクニクで学んだ後,1820-30年G.ラメとともにロシアへ赴き当地の科学技術教育に貢献した。帰国後は鉄道技師を経て土木工学校の教授を務めた。彼の業績の一つは,N.L.S.カルノーの熱機関の理論の意義に気づき,数学的な表現を与えて世に紹介したことである。それは《熱の動力について》(1834)でなされたが,この中でJ.ワットが蒸気機関の性能を調べるのに用いたインジケーター線図を抽象化して,熱機関の作業物質の状態を,横軸に体積,縦軸に圧力をとったグラフで表示する方法を用いている。のちに熱力学で用いられる物質の状態図の初めである。このほか,飽和水蒸気が凝結と蒸発を繰り返すカルノーサイクルを熱素説の立場から考察し,熱平衡にある物質の二つの相の圧力,体積,温度の関係を与えるクラペイロンの式(クラウジウス=クラペイロンの式)を導いた。
執筆者:安孫子 誠也
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