精選版 日本国語大辞典 「熱機関」の意味・読み・例文・類語
ねつ‐きかん ‥キクヮン【熱機関】
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熱の形で得たエネルギーを力学的仕事に変える装置。熱力学的にいうと、熱機関とは、高熱源から熱を吸収し、その熱の一部分を低熱源に放出し、それらの差だけの仕事を外部へなす操作を繰り返し行うものである。この仕事は普通は力学的仕事であるが、たとえば熱を直接に電気エネルギーに変える、いわゆる直接発電装置も熱機関である。
[沢田正三]
熱機関には可逆的なものと不可逆的なものとがある。現実の熱機関はすべて不可逆熱機関である。一方、可逆熱機関は理想的なもので厳密にこれを実現することはできないけれども、熱機関の基礎理論は、可逆熱機関のうちのまたもっとも理想的なもの、すなわち理想気体を作業体とするカルノー可逆サイクルを行う熱機関の考察のうえに打ち立てられている。まず、理想気体の状態方程式と熱力学第一法則とから、温度がT2の高熱源から吸収する熱量Q2、温度がT1の低熱源へ放出する熱量Q1を正確に計算することができ、その結果Q2/2T2=Q1/T1という関係があることがわかる。外部へなす仕事WはW=Q2-Q1で与えられるから、この等式はW/(T2-T1)にも等しい。このサイクルの、したがってこの熱機関の効率ηの定義はη=W/Q2あるから、前の結果を用いてη=(T2-T1)/T2であることがわかる。一方、熱力学第二法則から導かれるカルノーの定理によると、一定の高熱源・低熱源の間に働く可逆熱機関の効率は、すべて等しく、かつこの二つの熱源の間に働く不可逆熱機関の効率よりかならず大きいということがいえる。結局、前述の効率η=(T2-T1)/T2という式は、温度T2の高熱源と温度T1の低熱源との間に働くすべての可逆熱機関の効率を表し、この二つの熱源の間に働く不可逆機関の効率はかならずこれより小さいということになる。
熱機関は外燃機関と内燃機関とに大別される。
[沢田正三]
外燃機関は、作業体である気体を熱機関の本体の外部で発生させるものである。そのもっとも代表的なものは1765年ワットによって実用化された蒸気機関である。これでは、まずボイラーにおいて石炭などの燃料を燃やして水から水蒸気をつくる。これを機関の本体へ送り、その圧力によりシリンダー内のピストンを運動させる。その際、弁室内の弁の作用により、ピストンが巧みに往復運動をする。動力機として使用するのには、ピストンをコン・ロッド、クランク・アームを通してクランク軸に連結し、ピストンの往復運動をクランク軸の回転運動に変換する。蒸気機関は蒸気機関車(SL)として、今日においても世界全体では重要な交通機関である。外燃機関としては蒸気タービンも実用化されている。
[沢田正三]
内燃機関は、機関の内部自身で、ガソリン、石油、重油などの燃料と空気とを混合したガスを燃焼させ、そのとき生じる高圧のガス、いわゆる燃焼ガスの圧力を利用するものである。動力発生の方式からは、次のように分けられる。
(1)ピストン機関 シリンダーの中でピストンが往復運動をする点では、蒸気機関と同じであるが、本体内に燃料の燃焼機構をもっている点が異なる。現在もっとも広く用いられているものはガソリン機関とディーゼル機関である。前者は、ガソリンを使用し、ガソリンを気化させ空気と混合するための気化器と、電気火花による点火装置とを備えている。後者は、重油あるいは軽油を使用し、空気がピストンで圧縮された状態にあるときに燃料が噴射されると、燃料が着火して爆発するもので、気化器や点火装置のかわりに燃料噴射装置を備えている。
(2)ガスタービン 空気圧縮機によって高圧となった空気と燃料噴射弁から噴射された燃料との混合物を連続的に燃焼させ、生じる燃焼ガスによってタービンを回転させるものである。タービンは、ケーシング(外胴)の内側に固定されたノズル羽根と、そのすぐ後ろにあってタービン軸(回転軸)に固定されたタービン羽根とからなる。また、熱効率がよくなるために、熱交換器がつけられている。
(3)ロータリー機関 ケーシングの内部に三角板状のローターが存在する。ケーシングとローターに挟まれた空間で燃料が爆発してローターが回転する。ローターの回転は、その内側に刻まれた歯車とかみ合った歯車をもつ回転軸の回転となる。
(4)ジェット機関 機関内部において燃料が空気中の酸素によって燃焼して生じる燃焼ガスを機関の後ろの口から噴出させ、その反作用として生じる推力(スラスト)で前方に推進するものである。これにはガスタービンを使用するものと、しないものとがある。前者にはターボジェット、ターボプロップ(プロペラを使用するもの)が属する。後者は、高速で飛行する際に生じる高圧の空気による燃料の燃焼を利用するのであって、流入空気に対する自動開閉弁があるパルスジェットと、それがないラムジェットとがある。
(5)ロケット機関 燃焼ガスを噴出させて推力を得る点ではジェット機関と同じであるが、機関内の固体あるいは液体の燃料が同じく機関内にある酸化剤から供給される酸素によって燃焼し、空気をまったく必要としない点が異なる。固体燃料としては過塩素酸カリなど(酸化剤は硝酸カリなど)、液体燃料としてはアルコールなど(酸化剤は液体酸素など)が使用される。ロケット機関の実現によって初めて宇宙飛行が可能になった。
[沢田正三]
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高熱源から熱をとり,低熱源に熱を与え,その差を力学的な仕事にかえて外に出す装置で,蒸気機関,内燃機関,蒸気タービンなどの種類がある.高熱源からの熱量をQ,外に出す仕事をWとするとき,熱機関の効率ηはW/Qで定義される.低熱源に与える熱量をQ′とすると,エネルギー損失のない理想的機関では
η = (Q - Q′)/Q
である.効率ηは高熱源からの熱を仕事にかえる割合を表し,その値が大きいほど熱量をむだに低熱源に移すことがないことを示す.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…自然界に起こる過程は,摩擦,熱伝導など不可逆過程が多く,したがって自然界(宇宙)を孤立系とみなせばエントロピーの総和はその極大値に向かって増加していることになる。可逆変化不可逆変化
[エントロピーと熱機関の効率]
エントロピーの概念を用いると,理想的な熱機関の効率ηを計算することができる。最大効率をもつ理想的な熱機関の効率ηは,エネルギー保存則と熱力学の第2法則より,エントロピーの変化をなるべく少なくして,外にとり出す仕事を最大にする過程,すなわち可逆過程に対する効率として求められる。…
…熱機関は熱エネルギーを継続的に機械的エネルギーに変える装置であるが,必ずエネルギー変換の媒体として作動流体を必要とする。すなわち作動流体に高温熱源から熱を与え(加熱),その一部を膨張仕事として取り出し,残りの熱を低温熱源に捨てる(冷却)ことにより作動流体を元の状態にもどし(この一連の動作をサイクルという),これを繰り返す。…
… ランフォードに始まる研究は,仕事すなわち力学的エネルギーが熱に転化することを明らかにしたが,逆に熱から仕事をとり出す過程のほうの研究も,産業革命の主役,蒸気機関の改良という技術的要求から18世紀の半ばころから盛んになっていた。すでに1765年にJ.ワットは凝縮器を発明していたが,熱機関の理論的研究はS.カルノーによって始められた。彼は水が高いところから落下するとき水車を回すのと同じように,一般に熱機関では高温の熱源から低温のほうに熱素が移るときに動力が発生すると考えた。…
※「熱機関」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
少子化とは、出生率の低下に伴って、将来の人口が長期的に減少する現象をさす。日本の出生率は、第二次世界大戦後、継続的に低下し、すでに先進国のうちでも低い水準となっている。出生率の低下は、直接には人々の意...
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