クルスク(読み)くるすく(英語表記)Курск/Kursk

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クルスク」の意味・わかりやすい解説

クルスク
くるすく
Курск/Kursk

ロシア連邦西部、クルスク州州都。中央黒土地帯にあり、セイム川とその支流ツスカリ川の合流点付近の川岸に位置する。モスクワウクライナハルキウハリコフ)、ボロネジとウクライナのキーウキエフ)をそれぞれ結ぶ鉄道や、モスクワとウクライナのシンフェロポリを結ぶハイウェーが通る交通要地。人口44万5400(1999)、42万5950(2012推計)。クルスク州の中心的な工業都市で、機械(ベアリング、電気、トラクター部品)、化学(化繊、薬品)、製靴工業などがある。

 キエフ・ロシア(キエフ大公国)の要塞(ようさい)として、10世紀より知られていた。14世紀にリトアニア領に属したが、16世紀初めにはロシア領に入り、16世紀末からはクリム・タタールに備える防塞の一つであった。18世紀から商業中心地となり、19世紀後半に食品工業が発展した。第二次世界大戦中の1941年ドイツ軍に占領され、大きな被害を被った。しかし1943年7月にはソ連軍が大攻勢に出て、第二次世界大戦中最大といわれる大戦車戦を展開、ドイツ軍を破って大戦をソ連の勝利へと導く契機となった。教育医科農業工科の各大学、土壌侵食防止研究所、クルスク戦史博物館、交響楽団などの教育・文化施設があり、トロイツキー教会(17世紀)、カルギエフスキー寺院(18世紀)が保存されている。

[中村泰三]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クルスク」の意味・わかりやすい解説

クルスク
Kursk

ロシア西部,クルスク州の州都。中央ロシア高地南部,ドネプル川水系のトゥスカリ川がセイム川に合流する地点にあり,市街はトゥスカリ川右岸とセイム川両岸に広がる。年代記の 1095年の項に記され,11~12世紀はチェルニゴフ地方の辺境の要塞であったが,1240年タタールに破壊され,以後 1586年まで再建されなかった。 1943年7~8月,市の周辺で戦われたクルスクの戦いは第2次世界大戦中の最大の戦車戦の一つとして知られ,この会戦によりドイツの敗北が決定的となった。市は黒土地帯の中心地として,農産物加工業 (製粉,たばこ,皮革) が発達していたが,鉱山用機械,食品工業用機械,トラクタ部品,灌漑用ポンプ,電気器具,計算機,合成繊維,紡織,ガラスなど多種類の工業製品を生産する工業都市になり,近郊には大原子力発電所が建設されている。教育,医科,工科,農業の各大学やクルスク会戦博物館,郷土博物館などの教育・文化施設がある。また交通の要地で,モスクワ-ハリコフ (ウクライナ) 間とキエフ-ボロネジ間の鉄道,モスクワ-シンフェローポリ (ウクライナ) 間のハイウェーが市を通る。人口 41万4595(2010)。

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改訂新版 世界大百科事典 「クルスク」の意味・わかりやすい解説

クルスク
Kursk

ロシア連邦,ヨーロッパ・ロシアの南西部,同名州の州都。人口40万6410(2004)。トゥスカリ川とクラ川がセイム川に合流する地点に位置する。キエフ・ロシアの要塞として礎がおかれたが,1240年タタールに破壊された。16世紀にロシアに編入され,17世紀中葉,都市蜂起を経験。18世紀には軍事的意義を失い,19世紀後半から食品産業が発展,機械製造・化学工業が盛ん。1943年7~8月の戦闘(クルスク戦車戦)でも知られる。
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百科事典マイペディア 「クルスク」の意味・わかりやすい解説

クルスク

ロシア共和国南西部の工業都市。冶金,機械,化学工業が行われる。黒土地帯の中心で交通の要地。起源は古く,1095年の年代記にすでに名が見える。1943年7〜8月,独ソ両軍による史上最大の戦車戦〈クルスク戦車戦〉で知られる。日本と縁の深い詩人エロシェンコの生地。41万2184人(2009)。

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世界大百科事典(旧版)内のクルスクの言及

【クルスク戦車戦】より

…1943年7月,独ソ戦線の中央部クルスクKursk周辺で行われた史上最大の戦車戦。両軍合計,戦車1万3200両,飛行機1万1950機,火砲6万9100門,人員415万人という規模である。…

※「クルスク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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