日本大百科全書(ニッポニカ) 「クレーメル」の意味・わかりやすい解説
クレーメル
くれーめる
Gidon Kremer
(1947― )
ドイツのバイオリン奏者。ラトビア共和国のリガに生まれ、モスクワ音楽院でダビッド・オイストラフそのほかに師事、1969年パガニーニ国際コンクール、翌70年チャイコフスキー国際コンクールでともに第1位となり、頭角を現した。77年(昭和52)初来日。80年、旧西ドイツに亡命した。ほどなくロッケンハウス室内音楽祭を主宰、地味な室内楽とその奏者たちの力になるべく活動を開始。抜群の技巧達者であるにもかかわらず、鋭い繊細な感受性に忠実な演奏を目ざしており、第二次世界大戦後の世代を代表する大家の一人。ビバルディから現代までレパートリーは広く、そのなかにはアストル・ピアソラのタンゴ・オペリータも含まれている。80年代なかばからはピアノのアルヘリッチと組んだ二重奏のほか、97年に設立した室内合奏団クレメラータ・バルティカKremerata Balticaを主宰、指揮者としても活動している。
[岩井宏之]
『フェーリックス・シュミット著、高辻知義訳『音楽家の肖像――作曲家と演奏家の工房から』(1987・音楽之友社)』▽『中村稔著『ヴァイオリニストの系譜――ヨアヒムからクレーメルまで』(1988・音楽之友社)』▽『山本尚志・馬場広信訳『ちいさなヴァイオリン――ギドン・クレーメル自伝』(1995・リブロポート)』▽『カールステン・井口俊子訳『ギドン・クレーメル 琴線の触れ合い』(1997・音楽之友社)』