クログワイ(その他表記)Eleocharis kuroguwai Ohwi

改訂新版 世界大百科事典 「クログワイ」の意味・わかりやすい解説

クログワイ
Eleocharis kuroguwai Ohwi

沼沢地に生えるカヤツリグサ科多年草で,オモダカ科の料理用のクワイとは科を別にする植物である。水底の泥土中に長くはった根茎があり,その先端に直径6~10mmくらいの扁卵形の塊茎を作る。茎は根茎から出て,直立し,高さは80~100cm,幅3mmくらいの円筒形で,濃い緑色をしている。中は中空で,多数の横隔膜に仕切られ,指でおすとプチプチという音を立ててつぶれる。7~9月に出る小穂は円柱形で,長さ4cmくらい,茎の先端に1個つき,葉状苞はなく,淡褐色の鱗片が多数ある。花は各鱗片の内側にあり,果実は両凸レンズ形,基部に7~8本の刺針がある。本州の関東地方以西,四国,九州と朝鮮半島南部に分布する。近畿地方の池に多く見られ,また水田雑草となる。

 古くから知られた植物で,クログワイの名は《和名抄》や《本草和名》にすでに出ており,昔はその塊茎を野生の植物から採り,または栽培して食用にしたかもしれない。現在,中華料理で通称クログワイとして出されるものは日本本来のクログワイではなく,中国で育種されたオオクログワイE.dulcis Trinius ssp.tuberosa(Roxb.)T.Koyamaの塊茎で漢名を荸薺馬蹄(英名Chinese water-chestnut)というものである。この塊茎は紫褐色からほぼ黒色の皮に包まれた扁球形で,直径3~5cm,高さ1.5~2cmの大きさになり,白い肉はわずかに甘味があって歯切れがよい。中国では重要な根菜類の1種で,缶詰にして輸出され,さらに馬蹄粉と呼ばれるデンプンをとり,消化剤,胃薬としても利用される。日本でもまれに栽培されている。この中国のオオクログワイは,中国,インド,東南アジアに見られる日本のクログワイに酷似した別種シログワイ,別名イヌクログワイE.dulcis Triniusから中国人によって育種された栽培植物である。原種のシログワイは日本では紀伊半島,福岡県と沖縄本島にまれに自生しているが,それらが在来のものか,渡り鳥などによって南方からもたらされたものかは,今のところ不明である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クログワイ」の意味・わかりやすい解説

クログワイ
くろぐわい / 黒慈姑
[学] Eleocharis kuroguwai Ohwi

カヤツリグサ科(APG分類:カヤツリグサ科)の多年草。茎は細い円柱状で高さ0.5~1メートル、葉は鞘(さや)状になって茎の下部を包み、葉身状の部分はない。秋に花茎を出し、先端に長さ5センチメートルほどの緑色円筒状の花穂をつける。秋、地下茎の先に直径1~2センチメートルの塊茎をつける。表面は黒褐色でつやがあり、内部は純白色。冬季に採集し、煮て食用とするが、あくが強い。本州中部地方以西の水田や小川など浅い水の泥中に自生する。近縁種のオオクログワイは大型の栽培種で、中国料理などに用いる。

[星川清親 2019年7月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クログワイ」の意味・わかりやすい解説

クログワイ(黒慈姑)
クログワイ
Eleocharis kuroguwai

カヤツリグサ科の多年草で,池沼に自生する。茎は円柱形,鮮緑色で径3~5mm,高さ 50cmで,下部には薄膜の鞘をもち数本が叢生する。葉は退化している。秋に,その頂に長楕円形で黄褐色の花穂をつける。根茎は2~2.5cmの扁球となり,クワイ (慈姑)に似ている。外皮は黒いが内肉は白く,まれに食用とされる。

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