翻訳|gutta-percha
マレーシア原産のアカテツ科パラキウム属の植物(学名:Palaquium gutta)の樹液が固まった天然樹脂で、ガタパーチャともいう。主成分はトランス-1,4-ポリイソプレンであり、天然ゴムの幾何異性体である。
天然ゴムに比較して分子量が10分の1以下で、分子間力が大きく、白~赤褐色の硬い固体である。50℃以上に加熱すると軟らかく可塑性を示す。ベンゼンやクロロホルムに可溶で、濃硝酸と濃硫酸に侵されるが、その他の酸やアルカリには安定である。電気絶縁性が高く、19世紀後半から海底電線の被覆に用いられたが、20世紀後半にポリエチレンで置き換えられている。ゴルフボール外皮や歯科医療充填(じゅうてん)剤の用途があり、かつてカメラのボディの貼皮に使われた。
[福田和吉]
ガッタパーチャとも呼ばれる熱可塑性のゴムに似た物質。アカテツ科のパラクイウム属Palaquiumおよびパエナ属Payena植物の乳液が固まったもの。乳液の主成分はグッタ(68~88%)で,他に樹脂,灰分などを含む。グッタの化学構造は弾性ゴムのものとよく似ており,グッタはイソプレンがトランス-1,4型に重合したものであるが,弾性ゴムはシス-1,4型に重合したものである。結晶性に富み,室温では固体であるが,50℃以上ではやわらかくなる。ベンゼン,クロロホルムには溶けるが,他の有機溶剤や,酸,アルカリに対して安定である。これらの性質を利用し,古くは海底電線の絶縁性被覆材料に使われていたが,近時はゴルフボールの外皮,歯科用充てん剤などに使われているにすぎない。日本は全量輸入している。類似物としてバラタbalata(ミムソプス属Mimusops植物より採れる)がある。
→樹脂
執筆者:善本 知孝
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…しかし東南アジアからの輸入にたよらずとも自国内でも戦略物資である天然ゴムが生産可能であること,砂漠に近い乾燥地帯の荒地でも栽培可能であることなどから,メキシコやアメリカなどでその生産が積極的に検討されている。なお,弾性ゴム類似の分子構造をもつ天然物としてはグッタペルカ,バラタなどがある。これらはゴルフボールの外皮などに使用されるが,その分子構造はトランス‐1,4結合ポリイソプレンで,シス‐1,4結合ポリイソプレンである天然ゴムの立体異性体である。…
… ゴムによく似ているが弾性がない乳液生産物は,無弾性ゴムとしてまとめられよう。アカテツ科でマレーシア地域産のグッタペルカや中南米産のサポジラ(チクル)はチューインガムや海底電線の被覆材として重要であるし,キョウチクトウ科でマレーシア地域産のジェルトンの乳液はチクルの代用品とされる。(2)樹脂植物 樹液が固化した樹脂状のものでは,ペクチンに似た糖質のアラビアゴム系(英名gum)のものと,精油成分の酸化還元物である樹脂(英名resin)とが人間によって広く利用される。…
※「グッタペルカ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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