化学辞典 第2版 「グラハム」の解説
グラハム
グラハム
Graham, Thomas
イギリスの化学者.1819年には牧師になることを目的としてグラスゴー大学に入学し,T. Thomsonの教えを受け,化学を志す.1826年Master of Artsの称号を得た後,エジンバラ大学のT.C. Hopeのもとで化学を学んだ.1829年メカニカル・インスティチュートで講師を務めた後,1830年アンダーソニアン大学の化学教授となった.1831年には気体の拡散速度と密度に関するグレアムの法則を発表して,混合気体分離の可能性を示した.1833年にはリン酸の研究によって多価の無機酸(多塩基酸)の概念を提唱して,J. Liebig(リービッヒ)に影響を与えた.1835年と1836年にはエジンバラとロンドンの各ロイヤル・ソサエティに,水和の問題を扱ったものを提出して注目をひいた.1837年にロンドン大学のユニバーシティ・カレッジの化学の教授に就任し,逝去するまでその職にあった.ここで,広くヨーロッパ全域で化学教科書として読まれた名著Elements of Chemistryを執筆(1841年)した.また,この年に設立されたロンドン化学会の初代会長に選ばれた.1850~1851年気体の拡散の研究を液体の研究に広げ,両者の拡散が同様に論じうることを明らかにし,1856年浸透圧について報告している.1866年コロイドとクリスタロイド(晶質)を区別した新しい考察をして,のちにコロイド化学の創設者として高く評価された.終生,独身であった.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報