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ケルテース Kertész, Imre

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ケルテース
Kertész, Imre

[生]1929.11.9. ブダペスト
[没]2016.3.31. ブダペスト
ハンガリーの作家。現代ハンガリー文学の反体制文化における,比類ない,挑発的な作家であり,ホロコーストを描いた半自伝的な作品で知られる。ユダヤ系ハンガリー人として生まれ,第2次世界大戦中,14歳でポーランドのアウシュウィッツ収容所へ送られた。のちドイツのブーヘンワルト収容所に移され,1945年5月ドイツの敗戦により解放された。戦後,祖国に戻って新聞記者となったが,共産主義政権の文化政策を拒み,1951年に失職。その後はフリードリヒ・ウィルヘルム・ニーチェやジグムント・フロイトなどドイツ語の著作の翻訳で糊口をしのいだ。1960年代半ばに『運命ではなく』Sorstalanság(1975。2005映画化)を完成させたが,約 10年にわたって日の目をみず,刊行後も認められなかった。同書はユダヤ人収容所での経験に基づく半自伝小説であり,『破綻』A kudarc(1988),『生まれなかった子供のためのカディッシュ』Kaddis a meg nem született gyermekért(1990)も同じ手法で執筆されている。1989年の共産政権崩壊後に精力的な作家活動を再開し,また 1990年に『運命ではなく』がドイツ語に訳されるなどして,国内外でしだいに知られるようになった。ほかの著作に『イギリスの旗』Az angol lobogó(1991),『ガレー船日記』Gályanapló(1992),『もうひとりの自分変身物語』Valaki más: a változás krónikája(1997)などがある。最大の賛辞を受けた『運命ではなく』をはじめとする業績により,2002年ハンガリー人として初のノーベル文学賞を受賞した。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ケルテース
けるてーす
Kertsz Imre
(1929―2016)

ハンガリーの作家。ブダペストに生まれる。ユダヤ系ハンガリー人であったため、第二次世界大戦中の1944年、14歳でポーランドのオシフィエンチム(アウシュヴィッツ)強制収容所に送られ、その後ドイツにあるブッヘンワルト収容所に移送された。戦後は、1948~1951年までブダペストの新聞記者として活動。解雇後2年間の兵役についた。その後は、ニーチェやウィットゲンシュタイン、フロイトなどのドイツ語作品の翻訳などを行っていた。
 最初の作品、『運命ではなく』(1975)は、ナチス・ドイツによるユダヤ人排除政策にあった少年が、強制収容所に入れられ、過酷な現実と対峙(たいじ)する姿を活写した自伝的小説であり、『挫折(ざせつ)』(1988)や『生まれなかった子のためのカディッシュ』(1990)とともにホロコースト三部作を構成している。また、エッセイ集の『文化としてのホロコースト』(1993)も有名である。彼のこれらの作品は、強制収容所の実体験を淡々と描写しており、ホロコーストの「脱神話化・普遍化」を行ったとして、ハンガリー国内よりもドイツやアメリカなど諸外国で高く評価されている。2002年、ノーベル文学賞受賞。[編集部]
『岩崎悦子訳『運命ではなく』(2003・国書刊行会)』

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