こなら

精選版 日本国語大辞典 「こなら」の意味・読み・例文・類語

こ‐なら【小

  1. 〘 名詞 〙 ブナ科の落葉高木。各地の山野に生える。高さ一五~二〇メートルに達する。樹皮灰白色で縦に裂ける。若枝や若葉は淡褐色の毛を密生。葉は長さ一センチメートル内外の柄をもち長さ五~一二センチメートルの倒卵状長楕円形、先はとがり縁にあらい鋸歯(きょし)があり、裏面は灰白色を帯びる。雌雄同株で四~五月に開花する。雄花は淡緑黄色で新枝の基部の葉腋(ようえき)から長さ約一〇センチメートルの花穂となって下垂し、雌花は一~三個が新枝の上部の葉腋に集まってつく。果実はドングリの一種で長さ約一・五センチメートルの長楕円形で下部は殻斗(かくと)に包まれる。材は薪炭、器具材およびシイタケの培養木とし、樹皮はタンニン染色に用いる。漢名、青岡樹。ははそ。ほうそ。なら。ならしば。ほそ。
    1. [初出の実例]「下毛野(しもつけの)美可母(みかも)の山の許奈良(コナラ)のすま麗(ぐは)し児ろは誰(た)が笥(け)か持たむ」(出典万葉集(8C後)一四・三四二四)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「こなら」の意味・わかりやすい解説

コナラ
こなら / 小楢
[学] Quercus serrata Murray

ブナ科(APG分類:ブナ科)の落葉高木。高さ15メートル前後で、大きいものは25メートル以上、胸高直径80センチメートルに達する。樹皮は灰黒褐色で縦に不規則に浅裂する。老樹では灰白色となり深裂する。主根は垂直、深根型で、地下3メートルに達し、稚苗も主根は太く棒状となる。枝は斜上し、先端は細く分枝する。1年枝は灰褐色で有毛であるが、のちに無毛となる。皮目は白色で散生し、冬芽は5稜(りょう)のある円錐(えんすい)形で、褐色の鱗片(りんぺん)で密に包まれる。葉は互生し、葉柄は3~20ミリメートル、裏面は軟毛が残り灰緑色、葉身は倒卵形ないし長楕円(ちょうだえん)形をなし、長さ6~15センチメートル、葉縁にはやや内曲する粗い鋸歯(きょし)がある。側脈は9~12対。雄花序は開葉直後に新枝の下部に数個下垂し、長さ4~8センチメートル、花は多数。4~6個の雄しべから無数の花粉を放出する風媒花である。雌花序は新枝の上部の葉腋(ようえき)から斜上し、長さ1~2センチメートルで、花は総包に包まれて2個ないし数個つき、柱頭は心臓形に3裂する。秋には子房が発達して堅果となり、総包は瓦(かわら)重ね状に癒着しながら成長し殻斗(かくと)となる。堅果は円柱状楕円形で褐色、上端に柱頭が残存し、下部は殻斗に3分の1ないし4分の1が包まれる。堅果に休眠性がなく、落下して1か月足らずで長さ20センチメートルほどの根を出すが、子葉は種子内にとどまり、地下子葉として冬を越す。乾燥には極端に弱い。

 陽樹若木の成長は早い。萌芽(ほうが)力が強く、伐採後20年で樹高15メートルに達し、薪炭林(しんたんりん)としてクヌギとともに日本を代表する雑木林をつくる。種子島(たねがしま)以北の日本全土および朝鮮半島の低山帯にもっとも普通にみられるが、天然林はまれである。タバコの栽培では落ち葉を畑にすき込んだり、シイタケの原木として利用するために、人為的に管理された林も残るが、近年の燃料革命で放置された林は、マツ林と同様に、より耐陰性の強いカシ類の林に変わりつつある。材は環孔材で木目は美しい。針葉樹とは逆に、成長の早いものほど比重は重く良材となるが、大径木がなくなったため、家具などのナラ材はほとんどがより良質の北海道産のミズナラを用いる。

 外国語のoak(英語)、chêne(フランス語)、Eiche(ドイツ語)はコナラを含むナラ属Quercusをさすが、狭義には、常緑で殻斗に輪紋様があるカシ類と対比されるコナラ亜属Lepidobalanusに含まれ、殻斗に鱗片が瓦重ね状につく特徴があるものをさす。このナラ類は北アメリカを中心に北半球の温帯に広く分布し、200種以上を含む大きなグループである。ヨーロッパナラQ. roburQ. petraeaは大木となり、「森の王者」と尊ばれ、建築材、家具材、洋酒の樽(たる)材として、また大量の実はブナとともにブタの飼料としてたいせつであった。地中海沿岸や暖帯、亜熱帯には常緑のナラもあり、holm oak、live oakとして区別することもある。単なるoakは落葉性のナラをさし、カシと訳すのは正確ではない。中国では「」の字をあて、カシの「」と区別する。和名のナラは、単にコナラ、ときにミズナラをさすのが普通である。ハハソ(柞)はコナラやクヌギの古名である。

[萩原信介 2020年1月21日]

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改訂新版 世界大百科事典 「こなら」の意味・わかりやすい解説

コナラ
Quercus serrata Murray

山野の日当りのよい地に普通なブナ科の落葉樹。条件が良ければ高さ15mもの大木にもなるが,やせ地に生えて低木状のものも多い。ハハソともいう。幹は直立し,銀白色で不規則な縦のひび割れがある。枝はやや細く,よく分枝する。葉は互生し,倒卵形で葉柄は1cm程度,やや枝先に集まってつく。側脈は明らかで,ほぼ平行に走り,鋸歯に達する。新葉は白い毛におおわれるが,成葉は葉裏のほかはほぼ無毛。花期は4~5月。雌雄同株。雄花序は新枝の下部にひも状に垂れ下がり,雌花は新枝の上部の葉腋(ようえき)の短い柄に数個つく。毛の生えた鱗片状の苞や花被の間から3本の花柱が見える。どんぐりは細長く,その年の秋に熟す。殻斗(かくと)は細かい鱗片におおわれる。北海道,本州,四国,九州と日本の温帯下部から暖帯に広く生育し,朝鮮,中国にも分布する。薪炭材にしたり,落葉を肥料にするなど農山村の生活と密接なかかわりを持っていた。材は建築,家具などに用いられるが,ミズナラほど優秀でない。

 ミズナラQ.mongolica Fischer var. grosseserrata (Bl.) Rehd.et Wils.はコナラより高い所に生え,大木で森林をなす。葉の鋸歯が粗く三角で,葉柄がほとんどない。ミズナラの材はコナラ属Quercusの材の総称であるナラ材のうち,世界一優秀なものといわれる。

 コナラ属Quercusは世界に約500種あり,ヨーロッパでoakといわれるものもこれに属する。いずれも材は堅く有用であるが,利用は分類群により少しずつ異なっている。日本では,常緑のカシ類とウバメガシ,落葉のクヌギ類とナラ類に分けられるが,世界的にも大きく見るとその4群が認められる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「こなら」の意味・わかりやすい解説

コナラ(小楢)
コナラ
Quercus serrata

ブナ科の落葉高木。古名をハハソ (柞) という。単にナラ (楢)ということもある。山野に広く自生し,温帯の落葉広葉樹林帯の下部に生じる。雑木林のなかではあまり大きくならないが,十分生長すると高さ 17m,径 60cmに達する。葉は長さ5~12cmで互生し,短いが明瞭な柄があり,この点でミズナラ (水楢)と区別できる。葉身は倒卵状長楕円形で先端は鋭くとがり,基部は丸く,あらい鋸歯がある。若葉には両面に毛があるが,古い葉は表面は平滑,裏面に毛が残る。葉質もミズナラに比べて厚い。雌雄同株で,春早く黄緑色の紐のような尾状の雄花序を垂らす。果実は殻斗 (かくと) をもち,いわゆるどんぐりとなる。

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百科事典マイペディア 「こなら」の意味・わかりやすい解説

コナラ

ナラ

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世界大百科事典(旧版)内のこならの言及

【団栗】より

…ブナ科,とくにコナラ属(クヌギカシ類など)植物の果実の総称で,樹上にあるときは基部は殻斗に包まれている。果皮は堅く,つやがあるか,毛におおわれる。…

※「こなら」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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