サンチェス(その他表記)Sánchez, Francisco

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サンチェス」の意味・わかりやすい解説

サンチェス
Sánchez, Francisco

[生]1550頃.ブラガ
[没]1623.11.26頃.ツールーズ,フランス
ポルトガル生まれの医学者,哲学者。フランスで教育を受け,モンペリエ大学入学 (1573) ,博士号を受け (1574) ,ツールーズ大学で教授として医学と哲学を講じた。主著不可知なるがゆえに最高貴にして第一普遍なる学についての論究』 Tractatus de multum nobili et prima universali scientia,quod nihil scitur (1581) では,スコラ哲学,ルネサンス的空想哲学を批判。定義,論義,論証によって進められるスコラ哲学を,定義はことばの説明であると批判し,三段論法の大前提の真理性を疑った。ミシェル・エイケム・ド・モンテーニュ,ピエール・シャロンとともに懐疑主義者とされた (→懐疑論 ) 。真の学は「物の完全な認識」にあるとしたが,人間の認識は欠陥の多い肉体のために完全性にいたることはなく,その理想を追求するだけであると考えた。ほかに『医学論集』 Opera medica (1636) ,『哲学概論』 Tractatus philosophici (1649) などがある。

サンチェス
Sánchez, Florencio

[生]1875. モンテビデオ
[没]1910.2.23. ミラノ
ウルグアイ劇作家。貧家に生れ,1903年ブエノスアイレス移住,新聞社で働きながらボヘミアン生活をおくった。極度の貧窮のなか劇作に精進し,『わが子は医者』 Mi hijo el dotor (1903) で成功を収め,『他国の女』 La gringa (04) ,『崖下』 Barranco abajo (05) ,『家庭で』 En familia (05) ,『息子たち』 Nuestros hijos (07) など 19編の作品を書いたが,若くしてヨーロッパで客死。ラテンアメリカ近代劇のいわば創始者として,しばしば「ラテンアメリカのイプセン」と呼ばれる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サンチェス」の意味・わかりやすい解説

サンチェス(Florencio Sánchez)
さんちぇす
Florencio Sánchez
(1875―1910)

ウルグアイの劇作家。1903年にブエノス・アイレスに移り、ボヘミアンの生活を送りながら新聞に寄稿。09年ウルグアイ政府使節の一員として渡欧し、帰国後はブエノス・アイレスで演劇に専念。ヨーロッパを代表する劇作家イプセンらの作劇法を駆使してアルゼンチンの社会問題にくさびを打ち込み、ラテンアメリカ演劇界に大きな足跡を残した。『わが息子は博士』(1903)、『移民の娘(グリンガ)』(1904)、アルゼンチン版『リア王』ともいうべき『下り坂』(1905)など、農村を舞台にし、牧童(ガウチョ)をはじめとする土着民と移民の倫理感の対立、善と悪の闘いを主題にしたものに傑作が多い。彼の死によりガウチョ文学は幕を下ろす。

[安藤哲行]

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