日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガウチョ」の意味・わかりやすい解説
ガウチョ
がうちょ
gaucho
南アメリカ南部、アルゼンチンやパラグアイの草原地帯(パンパ)でウシの放牧に従事する人々。ブラジル南部ではガウショという。牧場主(エスタンシエロ)に雇われてウシの世話、食肉および皮革の調整にあたる人々で、多くは白人開拓者と先住民の混血である。幅広の帽子にシャツ、ズボン、革のブーツ、場所によってはポンチョといった簡素な服装で、都市から遠く離れた牧場に住む。乗馬技術は秀逸で、固い粘土玉を皮でくるんだものを3個皮紐(ひも)の先に取り付けた、ウシの足元に投げ付けて絡ませる道具(ボーラ)や、鞭(むち)を用いる。北アメリカのカウボーイと同様、さっぱりとして荒っぽいが社交的な気質をもち、物質的な利益を追い求めるよりは、荒野での孤独に耐える力や、何にも束縛されない自由を愛する心を誇りとする。アルゼンチンの経済を支えてきた牧畜の担い手であった彼らは、数多くの民謡や文学作品のなかで追憶に満ちた一つの理想像としてうたわれてきた。たとえばアルゼンチンのグイラルデスの小説『ドン・セグンド・ソンブラ』(1926)がある。
[木村秀雄]