翻訳|thermography
物体や生体の表面の温度分布を画像として表す方法をいい,臨床検査では患者皮膚表面の温度分布を画像として観察し診断情報の一つとする検査法をいう。赤外線輻射温度計で検出した温度を電気特性の変化としてとらえ,光の強弱に再変換して画像をつくりあげるもので,皮膚表面の連続した温度分布を観察できるようになっている。実際の医学的利用では,(1)血流変化から病変部位を推定すること,(2)病変の回復経過を観察することに主眼がおかれる。たとえば皮膚表層に近い癌では,血管増生の多いこと,代謝速度の速いことなどから,当該部位の温度は他の部位に比較して高い。また炎症性病変の存在部位も高温を示す。逆に血流の停止した領域の皮膚温は下降し,その低温域は傷害された血管の支配流域に一致する。創傷の治癒過程でも血管の増生,皮膚温の上昇は比例しており,サーモグラフィーの利用範囲は広い。温度差の検出限界は0.1℃以下で,輻射熱検出であるから患者皮膚,創面との接触も不要で完全な非破壊検査の一つである。
→臨床検査
執筆者:林 康之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
【Ⅰ】赤外線の熱作用を利用する複写法.原稿と感熱層を密着させて赤外線を照射し,画像部での赤外線吸収による温度上昇を利用して画像をつくる.多種の方式が考案され,短時間にドライで画像形成ができるが,熱の拡散のため写真方式に比べて解像力は劣る.【Ⅱ】物体から発する赤外線を検出して,温度分布を画像パターンとして表示する方法.赤外マッピングともいう.In-Sb,Geなどの半導体赤外検知器によって,対象物の微小部分の温度分布をディスプレイに濃淡として描く.機械の異常発熱部の検査,人体の異常部発見,そのほか広く利用されつつある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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