ザポリージャ(読み)ざぽりーじゃ(英語表記)Запорiжжя/Zaporizhzhya

デジタル大辞泉 「ザポリージャ」の意味・読み・例文・類語

ザポリージャ(Zaporizhzhya/Запоріжжя)

ウクライナ南東部、ザポリージャ州都市。同州の州都ドニプロ川沿いに位置し、河港を有す。16世紀にウクライナコサックが軍事拠点を置き、18世紀後半よりロシア帝国が進出し、アレクサンドロフスク要塞を築いた。旧ソ連時代に発電所が建設され、鉄鋼業自動車工業化学工業が盛んになり、重工業都市として発展。ザポリッジャ。旧称アレクサンドロフスク。ロシア語名ザポロージエ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ザポリージャ」の意味・わかりやすい解説

ザポリージャ
ざぽりーじゃ
Запорiжжя/Zaporizhzhya

ウクライナの重工業都市。1921年までアレクサンドロフスクАлександровск/Aleksandrovskとよばれた。ザポリッジャともいう。ロシア語ではザポロージエ。ドニプロ(ドニエプル)川中左岸に市の主要部があり、河港もある。人口81万5000(2001)、74万1496(2018推計)。市の起源は1770年に建設されたアレクサンドロフスク要塞(ようさい)である。のちにドニエプル・コサックの軍団司令部が置かれた。1806年に郡役所所在地となり、交易でにぎわった。重工業化の進展はソ連の第一次五か年計画(1928~1932)時代、ドニプロ発電所建設に負うところが多い。市の大企業には「ザポロジスターリ」(鉄鋼)、「ドニエプロスペツスターリ」(特殊鋼)、「アフトザズ」(1500~1600ccの小型乗用車タブリア・ノバ、1200ccの小型乗用車スラブタなどを製造)があるほか、変圧器、発動機、コークス化学などの工場がある。南ウクライナの学芸中心地でもあり、機械工学、教育、冶金(やきん)などの研究教育施設、グリンカ記念音楽堂、多くの劇場、郷土博物館、サーカス団、交響楽団などが置かれている。川中のホルチツァ島には保養所、休息の家、キャンプ場などの施設が多い。都市計画の基本は河岸のダムサイトの公園から緩く下る大通りを軸にしており、対岸にも新市街や新しい住宅団地が広がっている。

渡辺一夫・上野俊彦]

ドニプロ発電所

「ドニエプロゲス」が正式名称である。1927~1932年にわたって、ザポリージャの西端付近から対岸に向かってアーチ式の堰堤(えんてい)(長さ760メートル、高さ60メートル)を建設し、65.3万キロワットの発電能力をもつ発電所を設けた。左岸(市街側)に3室からなる閘門(こうもん)を設置して船舶が航行できるようにした。建設当時はヨーロッパ最大の発電所であり、レーニンの電化計画であるロシア電化委員会ゴエルロГОЭЛРО/GOELRO(1920~1931)の成果として知られた。1969~1980年に「ドニエプロゲス第二」発電所が左岸側に建設され、これは82.8万キロワットの発電能力をもっている。

[渡辺一夫・上野俊彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ザポリージャ」の意味・わかりやすい解説

ザポリージャ
Zaporizhzhya

ウクライナ南東部,ザポリージャ州の州都。ロシア語名ザポロージエ Zaporozhye。1921年までアレクサンドロフスク Aleksandrovsk(ウクライナ語名オレクサンドリウシク Oleksandrivsk)。ドニプロ川(ドネプル川)下流部左岸にある。かつて上流部に急流があり航行を妨げていたことから,「早瀬(ポローグ)のかなた(ザ)の町」を意味する名がつけられた。1770年,ドニプロ川に浮かぶホルチツァ島に本拠を置くザポリージャ・コサックへの統制を強めるため要塞が建設された。1806年に町がつくられ,1870年代に鉄道が開通すると物資輸送の重要な拠点となった。1917~20年のロシア革命で大きな被害を受けたが,1927年から 1932年にかけて当時世界最大級の水力発電所が建設され,大きく発展した。第2次世界大戦でダムは破壊されたものの復興し,豊かな電力をもとに,鉄鋼プラントや圧延工場の立地する一大金属工業の拠点となった。自動車や電気器具の製造,コークスを原料とする化学工業も盛ん。市街地はドニプロ川沿いに数kmにわたって広がり,緑地帯が工業地帯と住宅地を分けている。教員養成機関,製薬,機械製造の研究機関などがある。交通の要地で,クリミア半島(クルイム半島)とロシアのモスクワをつなぐ鉄道,ハイウェーが通り,空港もある。人口 79万9348(2005推計)。

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