最新 心理学事典 「シャイネス」の解説
シャイネス
シャイネス
shyness
シャイネスの測定法には,自己報告と他者評定がある。自己報告では,特性シャイネス尺度(相川充,1991)や早稲田シャイネス尺度(鈴木裕子・山口創・根建金男,1997)などの自己評定尺度を用いることが多いが,自己評定尺度は社会的望ましさによる反応歪曲が生じる恐れがある。これを防ぐために潜在的連合テストimplicit association test(IAT)を用いる試みもある(相川充・藤井勉,2011)。他者評定には,対象者を知る友人や教師などが評定尺度で評定する方法と,対人場面での対象者の発話潜時,外顕的行動(アイコンタクト,笑顔など)を測定する方法とがある。
シャイネスは,生得的な気質を基礎に,養育者をはじめとするさまざまな人間関係の中で,直接学習とモデリングによって形成される。幼児は,自分やモデルの対人反応が否定的結果をもたらすのを知ると,自分の対人反応の効果について否定的予想をするようになり,対人場面に対する否定的な認知や緊張や不安をもち,行動を抑制するようになる。この一連の過程が成長過程で強化されてシャイネスが形成されるのである。シャイネスが学習性のものであることは,日本人はアメリカ人よりもシャイで,シャイな人に寛容だといわれるように,シャイネスに文化差があることからも理解できる。文化差はあるものの,シャイネスは文化を超えて遍在しているため,進化心理学的には適応的機能を果たしているという考えもある。シャイネスがあるからこそ,重要な対人場面への準備が動機づけられたり,恥知らずな反社会的行動が抑制されたりするからである。ただし,いずれの文化においても自らのシャイネスを問題視する人は一定数に達し,実際にシャイネスが,友人関係や恋愛関係に妨害的に作用し,能力の十全な発揮を妨げ,社会適応や職業上の成功の妨げになっていることが実証されている。
シャイネスがもたらすこのような弊害を減らしたい人たちに対しては,対人関係を円滑にするようなソーシャル・スキルsocial skillsを教えるトレーニングや,非合理的認知や否定的自己評価を変えることをめざした認知療法的介入が有効である。 →対人不安
〔相川 充〕
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