改訂新版 世界大百科事典 「シュクシャ」の意味・わかりやすい解説
シュクシャ
(common)ginger lily
garland flower
Hedychium coronarium Koen.
芳香のある白い花をつけるショウガ科の多年草。分枝した地下茎から高さ1~2mの葉柄のまき重なった偽茎を出し,葉を2列に互生する。葉身は長卵形~長楕円形で有毛,長さ30~60cm。花序は茎頂から出て総状の花序をなし,緑色舟形の多数の苞につつまれる。花は約10cm近い長い花筒部を有し,広線形の花被片と白色で目だつ大きな平開する唇弁を有している。熱帯では周年,日本では夏から初秋にかけて咲く。原産地はインドからインドシナ半島のどこかであろうが,現在は切花や観賞用に広く栽培されている。日本には江戸時代末期に渡来した。根茎には精油を含み,痛み止めなどの薬用にされたり,また含有するデンプンをクズウコンのように利用することもある。ハワイでは花から精油をとり香水にするという。
シュクシャ属Hedychiumは東南アジアからマレーシア地域に約40種が分布し,マダガスカル島にも少数種が知られている。総状に多数の美しい花を咲かせるので切花や観賞用にされる種や,芳香性の精油を有するため薬用にされる種がある。サンナH.spicatum Buch.-Ham.はヒマラヤから中国南部山地域に分布し,根茎を輪切りにし乾燥したのが漢方の山奈(さんな)で,辛みと芳香を有し健胃剤などに用いられる。花はシュクシャよりも小さい。ニクイロシュクシャH.carneum Careyは花はやや小さいが多数つき,耐寒性があるため西南日本では露地で越冬する。花には芳香がない。キバナシュクシャH.gardnerianum Wall.は紅色のおしべが目だつ黄色の花を穂状に多数つけ,この属の女王と称された。ヒマラヤのシッキム,アッサム地域が原産で,花色には白から紅色を帯びたものまでいろいろ変化がある。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報